紹興酒を名乗るには厳格なルールがある

紹興酒は、黄酒(ホワンチュウ)という醸造酒の一種。原材料はもち米、麦麹、水の3つ。日本酒との大きな違いは、うるち米ではなく糖化されやすいもち米を、米麹ではなく麦麹を使用することです。
シャンパーニュ地方の「シャンパン」やコニャック地方の「コニャック」のように、正式に「紹興酒」と名乗るにはいくつかの厳しいルールがあります。例えば、中国の浙江省(せっこうしょう)紹興市にある15の認定工場で造られていること。そして、紹興の南にある湖・鑑湖 (かんこ)の水を使って仕込むことなどです。
さらに原料の種類、香味評価などの基準が厳密に設けられているほか、製造工程や分析値基準、試験方法などもルール化されており、これらをすべて守ってはじめて「紹興酒」と呼べるわけです。
「古越龍山 金龍」は甘辛いタレの料理にぴったり

実は筆者が紹興酒を飲むのは数年ぶり。まずは、古越龍山の定番である「古越龍山 金龍」から飲んでみることにしました。
香りは甘く、少し薬草のような独特の香りです。飲んでみると、最初はカラメルや黒糖のような甘みがして、最後にスッと酸味を感じます。後味としては酸味が残るので、たしかにこれがこってりした中華料理によく合うのにも納得!

ちなみに、紹興酒にはうま味成分となるアミノ酸が豊富に含まれており、回復系アミノ酸として有名な「オルニチン」も含有しているそうです、1本(640ml)の紹興酒にはしじみ200個分のオルニチンが含まれており、ワインの19倍、日本酒の27倍にあたるのだとか。まさかそんなにいい栄養素の含まれるお酒だったとは!

一緒に楽しむおつまみについてですが、「紹興酒に合うのは中華料理だけじゃないんですよ」とメーカー担当者に教えてもらったのが、「いわしの蒲焼」の缶詰。魚臭くて合わないのではと不安でしたが、まったくそんなことはなく、むしろタレの甘みが増幅し、魚臭さもきれいに消してくれます。後ほど紹介する「古越龍山 澄龍」ともペアリングしてみましたが、いわしの蒲焼には古越龍山 金龍のほうが合いました。
酸味が控えめな「古越龍山 澄龍」はさらに飲みやすい

古越龍山 金龍がまさに紹興酒のスタンダードな味だとすれば、「古越龍山 澄龍」はより軽やかな口当たりや華やかな香りをまとった紹興酒です。使用するのは「古越龍山陳年8年」の上澄みで、8年間熟成させることで味がまろやかになっています。
紹興酒らしい甘い香りを感じながら口に含むと、酸味や渋みが控えめで、後味はかなりすっきりしています。カラメルのような甘さはあまりなく、少し黒酢に近いまろやかさを感じました。冷やした古越龍山 澄龍をワイングラスで飲めば、その華やかな香りがいっそう楽しめます。

古越龍山 澄龍におすすめのペアリングフードは「チョコレート」。ミルクチョコと合わせてみたところ、チョコレートがフルーティーかつスッキリした味わいになり、紹興酒には甘みがプラスされ、まさに絶妙なバランスです! ほかにも「チーズ」との相性もいいらしく、ワインのような楽しみ方ができる紹興酒といえるでしょう。

紹興酒をペアリングという視点で考えたことはこれまでほとんどなかった筆者も、今回新たな楽しみ方を知れました。自分なりのベストなペアリングを探してみるのも、紹興酒を飲む楽しみのひとつかもしれません。
●著者プロフィール
今西絢美
「おいしいものナビゲーター」として、調理家電や食に関する記事を執筆。フードツーリズムマイスター、利酒師の資格も持つ。ウェブサービスやアプリのトレンドも絶賛追跡中。コンテンツ制作会社「TEKIKAKU」取締役。