
●奈良の蚊帳生地を活かした『中川政七商店』の名品「花ふきん」。機能性と美しい佇まいを持ち、日常に寄り添う存在であり続ける理由を紐解きます。
奈良の手しごとから生まれた、暮らしの名脇役

薄く、軽やかで、乾きやすい。そして、使うほどに柔らかくなる。『中川政七商店』の「花ふきん」は、ふきんの概念を心地よく覆してくれる佇まいも美しい日用品です。
![優しいアースカラーがキッチンに映える [食楽web]](https://cdn.asagei.com/syokuraku/uploads/2025/06/20250627-hamahukin03.jpg)
製造の舞台は、かつて蚊帳の産地として栄えた奈良県。1995年に誕生して以来、綿100%の蚊帳生地を二枚重ねにしたもので、2008年に布巾としては異例とも言えるグッドデザイン金賞に輝き、2022年にはロングライフデザイン賞も受賞。長年にわたり人々の暮らしを支えてきた価値が称えられています。
水に触れた瞬間に伝わる、とろんとしたやさしい生地感

使いはじめに水またはぬるま湯に入れ、糊を落とすと肌ざわりは一変します。とろんとした柔らかで手にやさしくなじむ生地で、まるで布が呼吸しているかのような心地よさ。軽く絞って、テーブルやキッチンまわりを拭いてみると、力を入れずにするりと拭き取れます。
驚きの汚れ落ちと速乾性

さらに驚かされるのが、汚れ落ちと水切れの良さ。さっとすすぐだけでもふき取った汚れが落ち、硬く絞って広げておけば、あっという間に乾いていきます。この速乾性は、日々の台所仕事において何よりも代えがたく、とても衛生的です。
これまで著者の家庭では、不衛生になるのが心配で、使い捨てのペーパータオルで拭いていましたが、「花ふきん」と出会ってから、ふきんという道具そのものの価値に目を開かされたような思いがしています。

経済的で、心地よく、衛生的。そしてなにより、使っていて気分がいい。たった一枚の布が、こんなにも暮らしの質を変えてくれるとはと、実感させてくれる名品です。

白百合、小手毬、竜胆、柳、水仙、檜扇など、色名も色味も、日本の四季や草花を思わせるやわらかさ。たとう紙に丁寧に包まれた姿も美しいので、プレゼントにも重宝しますよ。

台拭きの他、お弁当の包み、鍋敷きなどにも活躍してくれますよ。使うたびに心を整え、暮らしにやさしいリズムをもたらしてくれる静かな名脇役です。
(撮影・文◎亀井亜衣子)
●DATA
中川政七商店
https://www.nakagawa-masashichi.jp/