差し入れ以上、贈り物未満、アンダー1,500円のささやかな手みやげを“小みやげ(こみやげ)”と勝手に命名。気の置けない友人に、ちょっとしたお礼に。おいしくて財布に優しいうえに、もらった側もお返しいらずの気楽なアイテム。関西出身ライターが日常遣いする、テッパンの東京みやげをご紹介します。
ごはんもお酒もOK
みんなに喜ばれる名作コンビーフ

谷中銀座にほど近い「千駄木腰塚」は、昭和24年創業の精肉店。店の名を世に知らしめたのが、13年前に誕生した自家製コンビーフだ。卵かけご飯にのせるとめっぽう旨いと口コミがじわじわ広がり、今や「千駄木腰塚=コンビーフ」と言われるまでに有名になった。
店の2階で作るコンビーフは、塩漬けにした肩バラ肉を茹でて丁寧に手でほぐし、和牛のチチ脂を混ぜ合わせたもの。肩バラ肉の食感と牛肉の旨み、舌でとろけるあっさりとした和牛脂の調和がたまらない。
そのままはもちろん、トーストにのせて焼いたり、マヨネーズと和えたりとアレンジ自在。広く知られるきっかけになった卵かけごはんにのせる人も多いが、店のおすすめは「熱々ごはんにのせてわさび醤油を少し」。シンプルなほうが肉本来の旨みを味わえるからとのこと。とまあ、ごはんもおつまみのOKの万能選手なのである。
さて、精肉の話をしよう。ここの面白さは、何といっても真っ赤なショーケースだからだ。「千駄木腰塚」は東京食肉市場でも有数の取扱高を誇る仲卸業者であり、中間マージンがないため、レストランや高級焼肉店、百貨店などに卸す肉を良心価格で買えるというわけ。美しい牛肉がずらりと並ぶ様子は、圧巻の一言。「一番のお買い得は、A4、5の端肉を集めた霜降りの切り込みなんですよ」と羽生正太郎取締役がこっそり教えてくれた。
ベテラン(勤務歴50年以上の人も!)や若手スタッフが丁寧に対応してくれ、対面販売の楽しさも十分。あれれ、手みやげを買いに来たはずなのに、晩ご飯の献立を考えている……。隣でつっかけ履きのおばあさんがすき焼き肉を3枚買っていった。贅沢な日常がここにある。




●SHOP INFO
店名:千駄木腰塚
住:東京都文京区千駄木3-43-11
TEL:03-3823-0202
営:10:00~19:00
休:水曜
日持ち:コンビーフは製造1か月、開封後4~5日(冷蔵保存可)
地方発送:可
ほかに購入できる店:エキュート日暮里店、北千住マルイ店(3月17日オープン)
http://www.koshizuka.jp/
●著者プロフィール
森本亮子
編集・ライター。『東京の手みやげ』(京阪神エルマガジン社)など、手みやげ関連のムック・書籍や雑誌企画を多く手がける。レストランや酒場、肉などの食をメインに、おいしいものと街と人をこよなく愛する関西人。錦糸町在住。