『中華そば雅(磐田市)』(創業:2025年1月)

今回、ご紹介するのは2025年1月9日に磐田市にオープンした『中華そば 雅(みやび)』。磐田市は、名店『らーめんヤマシロ』が地域の“顔”として君臨していたが、2024年1月に惜しまれつつ店を畳み、次代のエースの登場が嘱望されていたところ。そしてこの『中華そば 雅』こそ、新たなエースに相応しい存在だと私は思う。
店主は、神奈川県厚木市の名店『麺や食堂』などで研鑽を重ねた経歴を持つ。店舗の場所は、JR東海道本線・磐田駅から約2km(徒歩30分程度)。『磐田麺屋さすけ』の跡地と言えば、ピンと来るラーメンマニアの方もいらっしゃるかもしれない。
同店の営業時間は、早朝6時〜9時までと、中休みを挟んで、11時〜14時まで。静岡県〈中部〉エリアに多い、朝・昼営業を採用している。
先述のとおり、ここ数年の間に、〈中部〉の老舗『マルナカ』など、『志太系』の流れを汲む店舗群が採り入れている朝・昼営業の波が、非『志太系』の店舗や〈西部〉エリアにまで一気に押し寄せ、静岡県中西部のラーメンカルチャーに大変革をもたらした。
実際に食べ歩いてわかったことだが、『志太系』の本拠地である藤枝市・焼津市から、西は袋井市、磐田市辺りまでの地域は、もはや夜営業を行う店舗の方が少数派。夕方以降にラーメンを食べようと思っても、開いている店はほぼ見つからない。ここまで朝・昼営業が浸透している地域は、日本中を探してもなかなかない(唯一、似た地域があるとすれば、福島県喜多方市くらい)。
つまり、このエリアで食べ歩きを行うに当たっては、早朝から昼14時までが勝負。全国のラーメン店を食べ歩く人には、「静岡県中西部の食べ歩きは、喜多方と同じ感覚で挑むべし」と、声を大にしてお伝えしたい。
さて、現在、同店が提供する麺メニューは、「中華そば」、及びそのバリエーションである「わんたん麺」、「炙りチャーシューわんたん麺」の3種類。

いずれもベースのスープは同一で、昆布・鯖節・鰹節・ウルメ節・宗田節・煮干し等の魚介から採った滋味深い出汁と、豚を主役に据えたコク深い動物系出汁とを、類まれなバランス感覚で重ね合わせ、風味芳醇な『ヒゲタ本膳』のカエシをオンした「清湯醤油」。昆布・鯖節・ウルメ節に由来する後を引くうま味が特に強調され、味蕾に刻まれる甘美な余韻が確実に食べ手を魅了する、魔性の味わいだ。
このスープとコンビを組むのは、名門製麺所・菅野製麺の乱切り麵。メリハリのある食感とモチっとした食感が快楽中枢を刺激し、すする度に脳内からドーパミンが噴出。餅のようにふっくらと柔らかなワンタンの口当たりも、並外れて官能的。「素朴」と「洗練」とが、絶妙なさじ加減で同居する考え抜かれた構成に、食べ手はただ脱帽するしかないだろう。
オープンからまだ日が浅いにもかかわらず、繰り出す1杯は、すでに一流の領域に到達している。
●SHOP INFO
中華そば 雅
住:静岡県磐田市大原1385-1 ルオースクエアーC
営:6:00〜9:00、11:00〜14:00(麺終了次第、早仕舞いの場合あり)
休:水曜