
国内外の注目食材が一堂に介する、国内最大の食の見本市「FOODEX JAPAN 2025」が今年3月に開催されました。会場内でひときわ目を引いたのが明るいグリーンのシンボルカラーを配したEU(ヨーロッパ連合)のブースです。
その周りにはEU加盟各国のブースが点在し、加工肉やチーズなどの乳製品、ワイン・ビールやオリーブオイルなどが所狭しと展示されており、至るところから美味しそうな香りが漂ってきます。

2019年にEU・日本経済連携協定(EPA)が発効されて以降は、EU諸国からの食材の輸入が飛躍的に増え、日本でもヨーロッパのさまざまな食材が格段に入手しやすくなりました。スーパーやデパ地下などでも今やお馴染みになってきましたよね。

そんな状況の中、2018年から「ヨーロッパ食材と日本食材のマッチング」をテーマに、FOODEX JAPANへの出展を行ってきたEU。その手応えやEU食材の人気の秘密、さらには今後の展望など開会式を終えたばかりのEUの担当者・アデリン・ヒンドゥラーさんに直撃しました。

――日本EUとの貿易は順調に推移しているように感じます。その手応えは?
アデリンさん:2019年に締結したEPAが重要なポイントになったと感じています。2023年には、両国の農産物の貿易額が約83億ユーロ(約1兆3400億円)まで拡大しました。おおよその内訳は、豚肉が15%、ワイン・サイダー・ビネガーが13% 、チーズなどの乳製品が8% フルーツやナッツ類が7%などです。
――好調な理由は何だとお考えでしょうか?
アデリンさん:まず関税の撤廃が大きな要因だと思います。これにより消費者が安定した価格でEUの食材を楽しめるようになりました。あとは日本の消費者の皆さまが、EUの食材にご満足いただいているからだと考えています。

――もう少し具体的にお願いします
アデリンさん:ヨーロッパでは1990年頃から始まった、おもに農産物や食品などを対象にしたGI(地理的表示保護制度)という制度があります。その土地と結びついた高品質な農産物や食品の名称を保護することを目的としたものです。
この制度に登録するには厳正な審査があり、勝手に「◯◯産」など名称を名乗ることはできません。クオリティを保証してくれる、いわば信頼の証です。これは逆に日本の食材がヨーロッパに輸入された場合も同じことが言えます。日本ブランドの独自性は世界的にも定評がありますから。
また我々は「クオリティ」「サステナビリティ」「オーセンティティ(伝統)」「セーフティ」の4つを高いレベルで実現すべく、目標に掲げています。これらの取り組みを日本の皆さまにどう知ってもらうのか? 例えば農作物を育てる時に殺虫剤や肥料の使用をどう管理しているのか? FOODEX JAPANはEU食材の取り組みをプレゼンテーションする貴重な場でもあります。
つまり私たちがFOODEX JAPANに出展を続けるということは、日本の市場に引き続き高品質な食材を届けるという約束に他ならないのです。
![ドミニク・コルビシェフによるクッキングショー。期間内に多くのクッキングショーやワークショップが開催された[食楽web]](https://cdn.asagei.com/syokuraku/uploads/2025/03/DSC_1196_s.jpg)
――FOODEX JAPANへの出展をスタートして以来、一貫して「EU食材と日本食材のパーフェクトマッチ」というテーマを掲げておられますね
アデリンさん:これはFOODEXだけのことに限らず、SNSなどでも広く発信を続けています。例えば、最も重要視しているオーガニック食材の場合、ヨーロッパからシェフを招聘し、実際に料理セッションなどを行って、料理の作り方はもちろん、どのように土から育てられたかなどを解説。実際に試食していただけるようにしています。
EUの食材と日本の食材が実際に調理される中で、どうお互いの良さを引き出していけるのか、こうしたデモンストレーションライブを通して多くの方に知っていただきたいと思います。そして日本のより多くの方にEUの食材が浸透することで、さらに日本との交易が盛んになればと願っています。
まとめ

4月にスタートする「大阪・関西万博」のEUパビリオンでも展示を予定しているというEUの食材。GIをはじめ、オーガニック表示の厳格な制度など、品質はもちろん安全性などの対策をいち早く行ってきたのがEUの農産物の特長です。美味しいのはもちろんですが、こうした付加価値が、何より我々日本人を惹きつける大きな理由といえるでしょう。
(撮影◎上野愛黄)