文豪も愛した荻窪の名店『鳥もと』での一人飲みがサバイバルすぎた【中央線1人飲み】

文豪も愛した荻窪の名店『鳥もと』での一人飲みがサバイバルすぎた【中央線1人飲み】
荻窪の名店『鳥もと』のカシラ(130円)

●東京生まれ東京育ち。中央線の飲み屋をこよなく愛するライター・松田義人による中央線一人飲み案内。今宵は荻窪の名店『鳥もと』へ。

 荻窪駅の東改札(地下)を出て、北口の地上へ。地上のすぐ出た右脇に、古来より多くの酒飲みたちを引き込むカリスマ的な酒場があります。その名は『鳥もと』。

 創業は昭和27(1952)年。古くは文豪・井伏鱒二が『鳥もと』を好み、後に中央線沿線で暮らす文化人、ミュージシャン、役者なども多く来店したことで知られましたが、2009年に駅周辺の再開発の影響で、『鳥もと』本店は荻窪駅北口の飲み屋街・荻窪銀座街に移転。

 さらに元あった駅横から100mほど西側に行ったところに、『鳥もと』2号店がオープンしました。いずれの店も移転から16年ほど経過した今なお、多くの酒飲みに愛され続けています。

風情ある良店が多い荻窪北口の飲み屋街

荻窪北口駅前商店街の風景
荻窪北口駅前商店街の風景

 筆者もかつて昼夜問わず旧『鳥もと』に通い詰めた時期がありました。ただし、様々な事情があるのは承知していながらも「再開発」というのがどうも苦手で、荻窪の南エリアで暮らしながらも、かつて大好きだった旧『鳥もと』がなくなって以来、足が遠のいていました。

 今回、久しぶりに今の『鳥もと』2号店で一人飲みをすることに決め、まずは荻窪駅北口周辺の今を偵察すべく散策することに。昔ながらの「荻窪北口駅前商店街」という小さなアーケードは健在ながらも、そのテナントの多くはチェーン店が占めています。「荻窪ならでは」の店はごく少なく、これは正直寂しく思いました。

「アサヒ通り」の様子。中にはシャッターが閉まったままの店も
「アサヒ通り」の様子。中にはシャッターが閉まったままの店も

 また、さらに一本東にある「アサヒ通り」は営業を続ける飲食店が複数ある一方、シャッターが閉まったままのところも。正直活気があるとは言い難く、侘しさが漂っています。

 しかし、さらに東側に行った飲み屋街「荻窪銀座街」はまだまだ健在で良い雰囲気の店が軒を連ねていました。

この「荻窪銀座街」の一角に今の『鳥もと』本店もあります[食楽web]
この「荻窪銀座街」の一角に今の『鳥もと』本店もあります[食楽web]

 この中に今の『鳥もと』本店もあります。こういった良い雰囲気の店の多くは、かつて闇市だった頃の雰囲気を守り、そして継承すべく営業を続ける店ばかり。どの店も大きくはないものの「荻窪ならでは」の佇まい自体がなんだか嬉しく勝手に応援したくなります。