吸い寄せられるように『いせや』へ。変わらぬ美味しさと居心地の良さ

というわけで、吉祥寺に用事があった帰り道。アトレ吉祥寺-atre-(いまだに筆者は『ロンロン』という旧名で呼んでしまう)の一番西側のガード下の出口を出ると、目の前の信号の向こうに『いせや』総本店の煙モクモクが視界に入り、「ちょっと飲むか」と吸い寄せられるように店のほうへ。

『いせや』総本店は道路沿いで立ち飲みもできますが、ここは煙直撃エリアなので、座って飲める店内に入りました。

店内は外国人観光客とおぼしき団体客でごった返していましたが、カウンターでは静かにのんびり、誰に干渉されるわけでもなく一人飲みを楽しむ常連客もいます。

その間に座ってすぐに瓶ビール(サッポロ赤星・650円)、名物の自家製シウマイ(390円)、つくね2本(200円)をオーダー。それぞれバラバラにサーブされました。まずはサッポロ赤星をグビリ。ほどよい苦味と強いキレが、乾燥気味の空気を潤してくれます。

続いてサーブされた自家製シウマイは、今も昔も変わらぬ旨さ。一般的なシウマイの3倍以上はある巨大なそれは、肉がギッシリ詰まっていて、柔らかくそしてジューシー。添え物のキャベツと一緒にいただくと、その食感差もまた面白く、ビールが進みます。

そして、つくね。筆者的には『いせや』の串モノで一番美味しいと思っているのがこれです。そのつくねはプリっとした食感で、筆者はいつもこれを塩でいただきます。こちらもまた一般的なつくねよりもやや大きめで、一口かじれば肉のふんわりとした風合いが口いっぱいに広がり、これまた酒のつまみに最高です。アッという間に赤星を一本すぐに空けてしまいました。
若い頃に常連から教わった謎の「オレンジ色っぽい液体」

続いて焼酎(250円)をオーダー。ストレートでサーブされる甲類焼酎は、これぞまさしく大衆酒場定番の味わいといった風情。シミジミ飲めばシミジミと五臓六腑に染み渡る味わいです。
今ほど酒好きというわけではなかったハタチの頃、『いせや』で背伸びしてこの焼酎を飲んでいたとき、隣のオジサンが何やらカウンターに置かれたボトルに入った「黄色い液体」を焼酎に混ぜて飲んでいるのを見かけました。
![『いせや』のカウンターに常備されている「オレンジっぽい液体」[食楽web]](https://cdn.asagei.com/syokuraku/uploads/2025/01/20240124-iseya10.jpg)
どうもそのボトルの「オレンジ色っぽい液体」は、常にカウンターに常備されているもののようで、つまりフリーで入れ放題。思い切ってオジサンに聞いてみると、「君知らないのぉ? これは梅シロップだよ。焼酎に混ぜて飲むんだよ。まだまだ若いねぇ」と少々小馬鹿にしながら教えてくれました。
この「常連客が、若者や新参者をやや小馬鹿にする感じ」は、中央線沿線の大衆酒場でなぜだかよく見る慣習です。おそらくは大衆酒場の慣習を大切に思うがあまり、あるいは普段はシャイな性格だからこそ、こういった場面で見慣れぬ客に対し「ちょっと上から目線で他人との距離を計る」のではないかと筆者は思っています。
『いせや』の懐の大きさに乾杯!

若い頃、『いせや』でそんな洗礼を受けて飲んだ焼酎の梅シロップ割りは、アルコールの口当たりが強い焼酎をまろやかにしてくれ、これがグビグビ進みます。この梅シロップの味わいもまた『いせや』ならでは。
なんだか若い頃の記憶が走馬灯のように蘇ってきます。梅シロップの魔力で数杯でも軽く飲み尽くせそうですが、過去数回、頭がグルングルン回って大失敗を起こした経験のある筆者は、ここでオーダストップ。

お会計は1490円。2杯+おつまみ2品で、この価格は十分お値打ちではないでしょうか。
筆者のような一人飲みの客はもちろん、サラリーマンの団体、外国人観光客の団体、家族連れ、若者の団体全てを受け入れてくれる懐の大きさが『いせや』にはあります。安くて美味しいおつまみをおつまみにいただく酒は「自分だけの至福の時間」になるはず。ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
(取材・文◎松田義人(deco))
●SHOP INFO
店名:いせや総本店
住:東京都武蔵野市御殿山1-2-1
TEL: 0422-47-1008
営:12:00~22:00(LO21:00)
休:火および年末年始