仕事がデキすぎるコンビニ外国人スタッフはいかにして生まれるのか? その謎を中の人に聞いてみた

日本語検定一定レベル以上の外国人に絞って採用

ローソンスタッフの藤井勝さん
ローソンスタッフの藤井勝さん

 冒頭で触れた『ローソンスタッフ』は、ローソンとは別経営の事業体です。ローソンスタッフの母体となる会社が、ローソンのフランチャイズ店を全国で約40店運営していることもあり、オペレーション面でのノウハウを確立。後に、ローソンと協業し派遣会社となりました。そこで、外国籍の方も含めてスタッフをローソンに派遣しているのだそうです。

「ローソンスタッフの関連会社がベトナムにあることから、まずベトナム人留学生の雇用が多く、そして最近だと中国人留学生の雇用も多くなりました。年齢層は20〜30代、男女比では女性60%、男性40%くらいの割合ですね。

 こういった外国人の方が日本に来る目標の多くは『日本のサービスを学んで自国で飲食店を開きたい』『ホテルでお仕事をしたい』といったものが多く、その目標の手前の段階でコンビニスタッフを経験することが多いように感じています」(藤井さん)

 ただし、今のコンビニは商品やサービス点数が実に多彩で、結果的に業務は多岐にわたります。通常のレジ打ち、陳列だけでなく調理、掃除など。それをテキパキこなす外国人スタッフ。その採用の基準はどうなっているのでしょうか?

「まず日本語検定の一定レベル以上の外国人の方に限って応募いただいています。そして実際の面接では、『どれほど日本語が喋れるか』『日本語でのコミュニケーションがどれほどできるか』などを確認させていただき、条件をクリアした方を採用しています。

 コンビニという業態は、お客さまからさまざまな問い合わせや希望を受ける場所。特にローソンはサービス面でのレベルが高いチェーンです。仮に日本語が堪能だったとしても、日本人特有のコミュニケーションの取り方もわかっていただける方でないと採用に至らないこともあります。お客さまから見て『乱暴な対応だ』と思われてしまうことがあっては絶対にいけませんので」(藤井さん)

18時間〜最大5日間の研修を経て店頭へ

30年前のローソンとはレジの仕組みも商品点数もサービスもまるで変わっていることを実感
30年前のローソンとはレジの仕組みも商品点数もサービスもまるで変わっていることを実感

 私ごとですが、30年以上昔の学生時代にローソンでアルバイトをしていた経験がある筆者。ここで実際に藤井さんから、日頃、外国人スタッフにトレーニングしているという「レジ打ちの研修」を受けましたが、レジが当時のものと変わっていて、慣れるのにけっこう時間がかかりました。

「面接などをクリアした外国人スタッフ希望者の方の研修は、だいたい6つのステップに分けて実施しており、平均18時間ほどの研修を経て、実際に店頭に立つ方が多いです。一方、なかなか覚えられない外国人の方でも最大5日間くらい研修を受ければ、そのまま店頭に立てるようになります」(藤井さん)

「雨が降っているから今日は行きません」

 研修を一定時間のトレーニングでマスターし、店頭に立てるようになる外国人スタッフ。その一方、雇用後に日本人の想像を超えたところで、ギャップや問題が生じることもあるそうです。

「働く文化の違いですね。この点も研修でしっかり覚えていただくようにしていますが、たまにあるのが『雨が降っているから今日は行きません』というもの。ベトナム人の方に多いのですが、ベトナムでは雨が降るとお店を閉めるケースが多いようで、日本に来ても『雨ならお休みだろう』と思う方が多いようです。

 また、ボールペンの色も諸外国で微妙に異なり、アジア圏の多くの国では“青色のボールペン”を使うことが多いようです。でも、日本ではボールペンと言えば“黒”ですよね。つまり青色のボールペンでお客さまに何かを書いてお渡しした場合、『なんか変だぞ。なぜ青色なんだ』と思われてしまいます。こういった働く文化・慣習の違いも、研修ではしっかり覚えていただいています」(藤井さん)

 確かに日本で普通に生まれ育った筆者としても、ボールペンは青字がデフォルトといった細かい外国の慣習は想像しにくいものがあります。こういった点も、ローソンスタッフは最大の配慮と注意をもって研修しているそうです。