創業約90年を誇る老舗銭湯が、クラフトビビールを売る理由

高円寺は、ビール好きには知られた街。今や首都圏に数店舗を構えるブルーパブ『ビール工房』の第一号店『高円寺麦酒工房』(2010年開業)があり、ビアパブも多いエリアだ。そしてまた、この街は銭湯好きの聖地でもある。
1933(昭和8)年創業で、建造物が国の登録有形文化財に指定される『小杉湯』は、“きれいで、清潔で、気持ちのいい銭湯”として全国区の知名度を誇り、とくに週末は約1000人もの客が訪れる。
クラフトビールを飲む前に何をするか。その体験で美味しさは変わります

「クラフトビールが大好きなので、よく地元・高円寺のブルーパブ『高円寺麦酒工房』『アンドビール』などに行きます。ブルワリーならデンマーク『Mikkeller』のビールが好き。美味しいのはもちろん、渋谷の直営のタップバーで開催される、お客さん参加型のランニングイベントがいいんです。走り終わった後に、ビールで乾杯。これが本当に至福の時間ですよ」
ビールを飲む前後の体験で、味わいの感じ方は異なるというのが、『小杉湯』三代目当主・平松佑介さんの考え。湯上がりのドリンクとしてクラフトビールを揃えるのは、そのセオリーからだ。
「銭湯通いが日常ではない現在の銭湯の意義は、“ケの日のハレ”の創出だと思います。クラフトビールは、日常にちょっとした贅沢感をもたらしてくれる飲み物ですよね。あとは不定期ですが、地元のブルーパブなどから大麦とホップの絞りカスをもらい、ネットで包んで浴槽に入れます。ビール風呂に入った後に、クラフトビールを。『なんて贅沢なんだ!』と、体験した方からも大好評ですよ」

◎プロフィール
平松佑介
『小杉湯』三代目当主。住宅メーカー勤務、ベンチャー企業の創業を経て、2016年から家業を継いだ平松さん。男湯の富士山の壁画の前で、手にしているのは『小杉湯』で販売する「Mikkeller Hop Shop Hazy IPA」600円。なお『小杉湯』で取り扱うビールは不定期で変わる
撮影◎黒坂明美(七海さん)、橋本真美(平松佑介さん)、文◎川端うの[FIUME Inc.]、構成◎岩谷 大(七海さん)、文・構成◎岡野孝次(平松佑介さん)