実は400軒もの生産者が作っている!? 今さら聞けない「揖保乃糸」の秘密とは?

約400軒の製造でもバラつきやブレが出ない理由とは?

「揖保乃糸」製造の後半にあたる「門干し(かどぼし)」と呼ばれる工程の様子
「揖保乃糸」製造の後半にあたる「門干し(かどぼし)」と呼ばれる工程の様子

 こういった経緯から、「揖保乃糸」のそうめんは1社だけで製造するのではなく「組合に属する複数の組合員(生産者)が組合管理のもと『揖保乃糸』ブランドのそうめんを作る」という独特の取り組みとなっており、聞けばその生産者数はなんとおよそ400軒。しかし、素朴な疑問として、これだけの業者が「揖保乃糸」を作るとなれば、品質にブレが出てしまうのではないかということです。この点についても聞いてみました。

「原材料や資材など、定められた規格のものを組合が一括で仕入れ、それらを組合員に分配、統一された基準よって組合の検査指導員が製造指導や製品の格付け検査をおこなっています。厳しい検査に合格したものだけを組合のそうめん専用熟成保管倉庫に入庫、特約販売店を通じて全国に流通しています」(天川さん)

 その検査を行う「検査指導員」と呼ばれる人は、地元で実際に「揖保乃糸」の製造に従事している、そうめんづくりのエキスパート20名ほどからなり「揖保乃糸」の品質を死守し続けているのだそうです。

「揖保乃糸」は冬場の限られた時期に製造される!?

「揖保乃糸」は私たちがよく口にする赤帯の「上級品」(写真左端)以外にも、複数の銘柄があります
「揖保乃糸」は私たちがよく口にする赤帯の「上級品」(写真左端)以外にも、複数の銘柄があります

 こういった厳しい基準を経て作られる「揖保乃糸」ですが、実はその種類が数多くあります。スーパーマーケットなどで見かける赤い帯の「上級品」をはじめ、グレードは10以上。さらにひやむぎ、手延べうどん、中華麺、パスタなどもあります。中には、年間のうち、冬場のたった3ヶ月しか製造できない銘柄もあると言います。

ホームページの一部を抜粋(食楽web)
ホームページの一部を抜粋(食楽web)

「『揖保乃糸』は製造過程において、何度も何度も熟成を挟んで完成させていくのですが、例えば夏の暑い時期に製造すると熟成のコントロールがままならず、品質が落ちてしまうんですね。ですので、そうめんの製造は温度、湿度が安定している10月から翌年の4月にかけておこないます。なかでも特に気温が低く、ゆっくりと熟成が進む12月から2月に製造の最盛期を迎えます」(天川さん)

繊細に作り上げた「揖保乃糸」だからこそ、丁寧に茹でてほしい

「揖保乃糸」をシンプルな出汁と薬味でいただきます。揖保乃糸資料館そうめんの里レストラン「庵」
「揖保乃糸」をシンプルな出汁と薬味でいただきます。揖保乃糸資料館そうめんの里レストラン「庵」

 およそ400軒もの生産者が力を合わせ、協力しながら作り上げる「揖保乃糸」。その品質は地元の人たち同士が「揖保乃糸」を守り、そして多くの人たちの「美味しく食べてほしい」という思いのもとで製造されていることがよくわかりました。その上でいただく「揖保乃糸」は、いつも以上に繊細な味わいを感じることができました。瑞々しい口当たりと、程よいモチモチ感と喉コシ、そして口いっぱいに広がる優しい小麦の風味は、まさに唯一無二のそうめんだと思いました。ひいては、そのシンプル・イズ・ベストの味わいから、こだわりぬかれた良質な原材料、そして播磨人ならではのストイックな職人技をも強く感じることもできました。

●まとめ:古い歴史を持つ「揖保乃糸」。地元のおよそ400軒もの生産者が協力し品質を守り抜いているからこそ、あの美味しさが実現できていることがわかった!

瑞々しく、小麦の風味豊かな麺がたまりません!
瑞々しく、小麦の風味豊かな麺がたまりません!

 最後に天川さんに、生活者の方へのメッセージももらいました。

「今回解説させていただいた通り『揖保乃糸』は良質な原材料を採用し、組合管理のもと、組合に属する多くの組合員(生産者)さんが手間暇をかけて作っています。今後もぜひ多くの方にお召し上がりいただきたいです。また、そうめんは茹で方が命ですので、商品の袋や公式サイトの美味しい茹で方を参考にしてください。どなたでも簡単に、最高の状態で『揖保乃糸』をお召し上がりいただけると思います。公式サイトには季節を問わず、そうめんを美味しくお召し上がりいただけるアレンジレシピをたくさん紹介していますので、一年中そうめんを楽しんでいただきたいです」(天川さん)

「揖保乃糸」ブランドでは、9月いっぱいまで「そうめんやっぱり揖保乃糸キャンペーン」を実施中です。該当商品のバーコードを切り取り、複数あるプレゼントのコースに応じて必要枚数を集めて応募するもの。こちらもぜひチェックしてみてください。

(撮影・文◎松田義人)