肝入りひつまぶしの味わいやいかに?

そんなわけで、ワクワクしながら待っていると、ドーンとひつまぶしが運ばれてきました! ビジュアルからしてすでに美味しさが伝わってきます。蒲焼きの照り、ふっくらした厚み、そしてふわっと漂うタレとうなぎの香り…。そしてなんと言っても宝石のように輝く肝! ずっとこのまま眺めていたいくらい神々しい!

店員さんに食べ方を教えていただくと、「おひつの中のひつまぶしにしゃもじを十文字に入れて4等分に分けてください。1/4をお茶碗によそって、1膳目はそのままお召し上がりください。2膳目は薬味(ネギやわさび)をのせて味を変えて、3膳目はお出汁をかけてうな茶漬けにして、最後は一番お好きな方法でお召し上がりください」とのこと。
普段は人の言うことをあまり聞かない筆者も、このひつまぶしを目の前にしたら、「了解であります!」と、鬼教官を前にした純粋無垢な新兵のように従順に従いたくなるのが不思議です。
言われるがままに静かにしゃもじをおひつに挿し込み、うなぎの身を崩さないよう注意しつつ、4等分。緊張でプルプルと手が震えます。ケーキカットならぬ、ひつまぶしカット。テンションが上がります。

いざ最初の1膳目を茶碗によそってひと口。その時点でもう感無量です。「ウマっ!」としか言いようがありません。関西風に蒸さずに焼き上げたうなぎは、適度に身が締まって脂の乗りも最高。炭火の香りをまとっていて、旨味だけがギュギュッと閉じ込められているかのよう。噛めば噛むほど、その旨味たっぷりの脂が口でほどけていきます。
そしてやや固めに炊かれたごはんの粒立ちも完璧で、そのごはんに染み込んだタレがまた美味しいこと! キレがあるのに丸みも感じるコク深さで、甘すぎず辛すぎず、絶妙な味わいのタレです。
そして、楽しみにしていた肝心要の「肝」をいただきます。こちらも香ばしくタレで焼き上げられています。噛めばプリッと弾け、ほんのりとした苦味と甘味が怒涛のように口中を席巻します。う、ウマすぎる! ご飯とうなぎの合間に肝をかじる…。なんと贅沢な時間でしょうか。「時よ止まれ!」と心の中で願わずにはいられません。

あっという間に1/4を平らげ、いざ2膳目へ。今度はワサビとネギを添えていただきます。口に運べば、さらなる幸福の絶頂へ到達しました。ワサビがめちゃくちゃ合います。大げさですが、ワサビはこのひつまぶしのために存在するのでは? と思えるほど。永遠にお腹いっぱいになることなく、ひたすらこのひつまぶしを食べていたい…!
そして3膳目。いよいよひつまぶしの最大の見せ場である“うな茶漬け”の儀式に移ります。

濃厚な旨味をたたえたうなぎ、そしてキレのよい上品なタレ、そして粒立ちのよいごはんを、お出汁で一体化。これが美味しくないわけがない…。これをワサビでキリリと引き締めていただくとさらに旨味が際立ち、これまた至極の味わいです。
いよいよ最後の4膳目です。「最後はお好きな食べ方で」と言われていましたが、筆者は迷わず1膳目と同じように、「そのまま食べる」を選択。これは無限ループしたい気持ちの表れ。フードファイターのような強靭な胃袋があれば、「おかわり!」と叫びたいところですが、いかんせんお腹いっぱい。ごちそうさまでした。ものすごく美味しかった!
そんなわけで、うなぎの激戦区といわれる名古屋でも人気の『うな富士』の「肝入ひつまぶし」は本当に絶品。ちなみに、東京・有楽町にも支店ができたそうなので、東京住みの人は一度行ってみてください。めちゃくちゃ美味しいですよ。
(撮影・文◎土原亜子)