2時間待ちの牛丼屋が神戸にある! 神戸牛を使った日本屈指の絶品牛丼を食べたら昇天しかけた

見た目も味も段違い!作り手の思いが随所に光る美しい牛丼

「並盛」1500円に「卵(生卵)」100円
「並盛」1500円に「卵(生卵)」100円

 待つこと数分。ひときわ存在感を放つ神戸牛が盛られた牛丼を筆頭に、野菜たっぷりの彩り鮮やかな汁物、艶のある生卵、そして漬物が登場。その佇まいは、ただただ「美しい」のひと言です。

 メインとなる牛丼には、神戸牛がお米が見えないほどのっています。そして程よく焼き目のついた白ネギとシシトウ、大葉、三つ葉が添えられています。

「使用している部位は、肩ロースとリブロースです。遠方からわざわざ来てくださるお客様もいるので、見た目にもちゃんと気を配っていますよ」と教えてくれたのは、店主の菱井さん。

 実は、菱井さんはこのお店を始める前は約20年間イタリアンレストランのオーナーシェフをしていたという異色の経歴の持ち主。なぜ牛丼のお店を始めたのかを聞いてみると、次のように教えてくれました。

「10年ほど前にイタリアンの店をたたみ、自分一人でできる店をやってみたいと思ったんです。考えた結果、地元のブランド牛である神戸牛をリーズナブルに牛丼として提供しよう、と思ったんですね。牛丼は誰もが知っている料理ですし、神戸牛を使った牛丼は全国的にもどこにもなかったので」と菱井さん。

 というわけで、いざお目当ての牛丼をいただくことに。まずは神戸牛から。凝縮された肉の旨みが口一杯に広がっていきます。醤油のキレのある味がじんわりと染み渡り、肉と割り下の調和のとれた味。ものすごく丁寧な仕事ぶりを感じます。

 菱井さんいわく、牛肉はオーダーを受けてから火入れをしているとのこと。「醤油、酒、みりん、隠し味にかんずり(唐辛子の発酵食品)を入れた割り下を使っています。難しいのは肉の火入れ。その時々のお肉の状態を見極め、それに合った火入れを心がけています」

 すかさずご飯を口に頬張ります。使用しているお米は兵庫県産のコシヒカリ。同じ県の神戸牛との相性が良いんだそうです。程よい弾力があるお米は噛むほどに甘みが増し、牛肉のコクを優しく包み込んでくれます。思わず「ウマっ」と声が漏れてしまいます。

とろとろになるまで炊かれた玉ねぎ。素材の味が凝縮された名バイプレーヤー
とろとろになるまで炊かれた玉ねぎ。素材の味が凝縮された名バイプレーヤー

 肉とお米の間には、淡路島産の玉ねぎも入っています。こちらは、牛肉よりもやや甘めの味付け。なぜ肉の味と違うのかというと、玉ねぎと牛肉を別々に炊いているからだそう。

「玉ねぎは、醤油、お酒、みりん、生姜、出汁醤油を使い、少量の水(呼び水程度)でなるべく水は使わずに炊いています」と菱井さん。牛丼といえば、肉と玉ねぎは同じ鍋で一緒に炊くのが基本。しかしあえてこのひと手間を経ることで、旨み、甘み、辛みと、多層的で立体的な味を産み出しているわけですね。

牛丼と意外にもマッチするポトフ
牛丼と意外にもマッチするポトフ

 一気にかっ込みたくなる衝動を抑えつつ、次は汁物を堪能することに。牛丼の汁物ということで、味噌汁や吸い物など和の味わいをイメージしていましたが、驚くことに洋風です。

「今日の汁物はポトフです。具材は白菜、大根、人参、里芋をコンソメで味つけたものです。これが意外に牛丼と相性が良く、お客様にも人気です。たまにポトフのおかわりを下さいという方もいらっしゃいますよ」(菱井さん)

 その言葉どおり、コンソメの味は牛丼と非常に相性が良く、口に残る牛肉の美味しい余韻を胃袋へスッと届けてくれるよう。さらに、スッキリとしたコンソメの味がリセット効果を生み、常に最高の状態で牛丼を口に迎えることができます。

「最初は、イタリアンの技を活かした料理を考えていたんですが、やっぱり肉本来の味を楽しんでもらいたいと思い、牛丼には手を加えず、スープで遊ぶ程度にしています」と菱井さん。

卵に絡めて食べればすき焼き風に色々な楽しみ方ができる
卵に絡めて食べればすき焼き風に色々な楽しみ方ができる

 牛丼とポトフを楽しんだところで、脇に控えている卵へ。お客さんのほぼ100%がオーダーするという人気サイドメニューで、生卵と温泉卵のどちらかを選ぶことができます。今回は生卵を選択。食べ方としては、牛丼に直接かけたり、といた生卵に肉をくぐらせてすき焼き風に食べるなど、お客さんの自由です。

 試しにすき焼き風に卵に肉をつけて食べてみると、卵のまろやかな味が牛肉を包み込み、牛丼とはまったく別の味わいに変化。例えるなら、極上の牛丼が、極上のすき焼きに生まれ変わるようなイメージでしょうか。

 こうしてすき焼きを数回楽しみ、最後は、丼に卵をかけ回し、牛肉と卵、玉ねぎ、お米のマリアージュを楽しみます。幾度となく表情を変える丼に圧倒されっぱなしのまま完食です。いやぁ、最高でした!

神戸牛の牛丼なのにリーズナブルな理由は?

 ご覧いただいたとおり、めちゃくちゃ完成度の高い牛丼なのですが、その価格は極めてリーズナブル。神戸牛を使っているのにこの価格で提供できる理由を聞いてみると、「イタリアンの時代から取引のある業者さんが多く、その縁で肉を安く仕入れることができるのと、1頭分ブロックで部位を買うことで価格を抑えています。それに一人でやっているので人件費もほぼかかりませんしね」と菱井さんが教えてくれました。

「私一人でやっていることもあって提供スピードに限界があり、休日なんかは時間帯によっては2時間ほどお待たせしてしまう場合もあります。できるだけ時間に余裕を持って来店していただけるとありがたいです」と締めくくってくれました。

 時には、午前の部のみで一日分が売り切れてしまうこともあるという『神戸牛丼 広重』の牛丼。絶対に食べたい人は、事前に電話で混雑状況の確認をするか、テイクアウトで時間を指定してお店に行けば、待つことなく確実に牛丼を食べられるそうです。

 わざわざ足を運んでも食べたい至極の牛丼。神戸を訪れた際は、ぜひ一度食べに行ってみてください。牛丼の概念が変わる最高の一杯に出会えますよ。

●SHOP INFO

神戸牛丼 広重外観

店名:神戸牛丼 広重

住:兵庫県 神戸市中央区 中山手通 り1丁目22-21 藤正第3ビル 1F
TEL:078-222-6611
営:11:00~15:00、18:00~23:00(※昼、夜とも売り切れ次第閉店)
休:不定休
※コロナの影響により変動の可能性あり。詳しくはお店に直接確認ください