まさかの餃子づくし定食?

最初に登場したのが「焼餃子」。運ばれてくるなり、焼き油の香りがフワッと広がります。まずはそのまま食べてみると、薄皮でカリ&パリッとした食感。歯が中の餡に到達すると、肉汁がじわりとにじみ出します。もう「旨いっ」のひと言に尽きます! 言うなれば、野菜と肉、ニンニク&生姜、肉汁といった餡を構成するすべてのバランスが絶妙。
卓上のラー油やお酢、胡椒で好みの割合で作ったつけダレに浸せば、より旨みが際立ちます。さすが宇都宮餃子の老舗! しかも1個1個がとても軽いので、ついもう1皿! と追加したくなるんです。
さて、焼き餃子を夢中で頬張っているうちに、続いて水餃子が運ばれてきました。

見た目は実にシンプル。プルンプルンとお湯の中で泳いでいるように見えますが、実はこれ、お湯ではなく中華スープなんです。
水餃子は食べ方指南が壁に貼ってあります。まずはそのままいただき、続いて、卓上の酢や醤油、ラー油で味付けして食べるのがオススメそうです。

水餃子は、焼餃子とは違って皮は厚め。ツルン、プルンとした口当たりで、噛むとモッチモチ。中華スープはあえてかなり薄味にしてあるので、餃子自体の美味しさがよくわかります。キャベツや玉ねぎといった野菜の甘みが、ひと噛みごとにじんわり伝わってくるのです。

そして醤油、お酢、ラー油が加わると、さらに美味しさは加速。さながらご飯に食べるラー油をかけたような感じ。特に自家製ラー油が超優秀です。香ばしくて、辛み・旨み・甘みが三位一体となった深~い味わい。これも2杯3杯とおかわりできそう。
そして、気になって最後に追加した「タンタンスープ餃子」(450円)が登場しました。

「タンタンスープ餃子」は、その名の通り、担々スープの中に水餃子が浮かんでいて、もやしとネギがトッピングされたボリューミーな1品。食べてみると、スープは香ばしい白胡麻のペースト「芝麻醤」と中華スープの味で、辛味はほとんどありません。これが、なんと言いますか、まるで味噌汁のようにホッとする味わいなのです。
というわけで、焼餃子と水餃子をおかわりし、このタンタンスープ餃子を飲んでいて、ふと気づいたことがあります。それは、「これ、ある意味、宇都宮流の餃子定食なんじゃないか?」ということ。つまり水餃子はご飯、焼餃子がおかず、そしてタンタンスープ餃子は味噌汁、というイメージです。

ちなみに餃子の本場・中国では、餃子(水餃子)は主食なので、ご飯と一緒に食べず、ひたすら水餃子を味わうと言いますが、『香蘭』でも同様に、餃子とご飯を一緒に食べている人はほとんど見かけませんでした。むしろ同じ餃子でも、焼餃子、水餃子、スープ餃子といった種類ごとの差異を楽しんでいるようです。
ともあれ、『香蘭』の餃子は皮も餡も美味しくて、軽やかで最高でした。次回また宇都宮に行くときは、タクシーの運転手さんおすすめの『正嗣』にトライしてみたいと思います。
(撮影・文◎土原亜子)