こだわりのタルタルソースを使った絶品チキン南蛮定食を実食

いただいたのは「チキン南蛮定食」(4個・759円)。この定食、お値段の割にかなり豪華です。チキン南蛮のからあげは大ぶりで、1個50gはありそう。さっそくこだわりのタルタルソースをひと口。“たまご感”が強く、クリーミーでさっぱり系のソースです。酸味はほとんど感じませんが、旨みたっぷり。タルタリストに人気というのも納得の旨さです。

これを甘酢にくぐらせたからあげと一緒に口に入れると「カリリ…」という咀嚼音が脳裏にこだまします。衣には片栗粉のみを使用しているとのこと。甘酢にくぐらせているのにカリッとした爽快な食感は健在。素晴らしい! 「薄衣にこだわっているだけでなく、揚げ油の量や温度変化にも細心の注意を払っているのでこの食感に仕上がるんです」と店主・竹内さん。甘酢の酸味は控えめながら、飲み込む瞬間に甘い風味がフワリと広がり、これがなんとも上品な印象を残してくれます。
次の1個に箸を伸ばす前に、ゲソの煮物と大根の酢の物で舌をリセットします。「チキン南蛮とは対極の味を小鉢として用意しています」と竹内さん。酢の物はさっぱりしていて、お寿司のガリのような存在です。とくにゲソの煮物は激ウマ。プリッとした歯ざわりで弾力もあります。イカの美味しさがよく出ていて、それでいてさっぱりした味わい。

さて、再びチキン南蛮へ。肉はボリュームもあり、旨みも十分。1個平らげると、どうしても次の1個を求めてしまうこの魔力。「チキン南蛮はからあげの調味とタルタルソース、甘酢のバランスが大切」と話す竹内さん、この3要素のバランスを徹底して研究したそうです。その言葉に違わず、どれか一つが突出している印象はナシ。衣、肉、タルタルソース、甘酢が口の中でほどよく溶け合って実に美味しい。

竹内さんによると、酸味を抑えているのも理由があり、「酸味が強いと次の1個に箸が伸びなくなることがありますから」とのこと。からあげの衣には香ばしさもあり、これに甘酢の甘みがノスタルジックで優しい甘辛さを生み出しています。酸味が強いと、こういう風味も出ないでしょう。
からあげを完食するとタルタルソースがたくさん余ってしまいますが、これを千切りキャベツやブロッコリーにつけて食べるのもまた旨し。万能なタルタルソースは一食の価値アリ。ぜひ一度味わってほしいチキン南蛮です。

ちなみに、定食には味噌汁の代わりに、毎朝店内で仕込むという昆布とかつお節の一番出汁で作った渾身のわかめスープがついてきます。かつお節の香りが実にイイ。この香りだけで上品なかつお節の風味が口の中に広がっていくようです。これで口を洗い流しつつ食べすすめるのがオススメです。
●著者プロフィール
松本壮平
ライター・編集者。一般社団法人日本唐揚協会認定カラアゲニスト。生まれも育ちも「からあげの聖地」である大分県中津市。美味しいからあげを求めて東奔西走する「から活=からあげ探索活動」に明け暮れている。