裏メニューを注文できるのか?

『餃子の王将』に入店し、メニュー表を眺めます。裏メニューの構成要素である「天津飯」(480円)と「海老のチリソース」(620円)の存在を確認します。そして、若い女性スタッフの方を呼んで注文することにしたのですが……。
筆者「すいません、天津飯を餡なしで、そこに海老のチリソースをのせてチーズをトッピングしてもらいたいのですが」
店員さん「はい。単品でご注文いただき、ご自身でのせていただけますか」
筆者「あ、はい」
…何か思ってたのと違います。
単品をそれぞれ注文して自分で作るのなら、ただ自由な食べ方をしているだけです。期待していたのは、もっとこう店員さんがハッとこちらを二度見するなどしたうえで、アイコンタクトで「お客さん、タダモノじゃないね」というような素振りをみせた後、そそくさと厨房に戻って裏メニューをこっそり作ってくれる…という、禁酒法時代のアメリカのバーのような流れでした。
ひょっとしたらこの若い店員さんは “裏メニュー”を知らないのかもしれません。とはいえ、「“裏メニュー”を楽しみにしてたんですから、ぜひ厨房で天津飯にエビチリをのせたのを作ってください」などと頼む勇気があるわけもなく、結局「天津飯と海老チリを単品で」とお願いすることに。せいぜい「天津飯は餡なしで」とだけは告げました。
ええ、仕方ありません。思っていた裏メニューのイメージとは違いましたが、こうなったら自分で作ります。

というわけで、到着した天津飯の餡なしバージョンに、海老チリソースを自分でチマチマとのせていきます。「自分はいったい何やっているんだろう」という気もしてきますが、黄色いとろとろ卵の上に赤い海老チリがのるにつれ、どんどん美味しそうになっていきます。

ようやく完成すると、隣で餃子定食を食べているおじさんも筆者の料理に注目しています。「あのメニューはなんだろう?」と興味を持たれていると考えたいところですが、たぶん変なヤツがいるな、と訝しんでいるだけだと思います。これが王将好きに聞いた裏メニューなのだと教えてあげたい…!

いざ食べてみると、トロトロの卵にプリプリの海老チリの食感のコントラストが絶妙です。天津飯を餡抜きにしたことにより、海老チリの餡が卵やご飯に絡み、確かにめちゃくちゃ美味しいのです。

さらに、テーブルにあった「王将マジックパウダー」をかけて食べると、ますます旨みが増幅。味変で、卓上の「ゆず風味の餃子のタレ」もかけると、さっぱりしてどんどん食欲が増して、あっという間に完食できました。

この結果を王将好きの友人にLINEで報告し、チーズのトッピングをしていないことを注意されたりもしましたが、十分に満足できる味わいでした。

これを境に、筆者は『餃子の王将』のテイクアウトをする場合でも「チャーハン、餃子、海老チリ」を持ち帰り、家で海老チリをソースのようにのせて楽しむようになりました。みなさんもぜひお試しください。
(撮影・文◎土原亜子)