大門『ホルモン焼き 夏冬』でネパール人が作る謎の「ポカラカリー」を食べてきた

大門『ホルモン焼き 夏冬』でネパール人が作る謎の「ポカラカリー」を食べてきた
食楽web

 東京・大門。大小のオフィスビルがひしめくこの街で、ビジネスマンに人気のカレーがあると、大門で働く知人から情報がもたらされました。なんでも夜は大人気のもつ焼き店で、ランチの時間だけ、ネパールのおばちゃんが「ポカラカリー」なるカレーを出している、謎の二毛作店とのこと。

「ネパールに本当にそんなカレーがあるのかは知らないけど、具材は野菜と牛スジが入っていて、とにかく真っ赤で辛い。けどクセになる」と言うのです。「ただ、ネパール人のおばちゃんがほとんど日本語ができないから、福神漬を抜いてと毎回頼むのに、必ず入ってくるんですよ」というぼやきまで。

 情報があまりに不確かなので、食べに行くことにしました。大門駅から歩くこと3~4分。飲食店がひしめく路地裏に、その店『ホルモン焼き 夏冬(かとう)』がありました。

昼にだけ、この看板が出ています
昼にだけ、この看板が出ています

 お昼時を少しずらして13時過ぎに行ったのですが、店は会社員らしき人たちでほぼ満席。出て行く人と入れ違いに入店すると、ネパール人らしき中年女性がすかさずビールジョッキに並々入ったお冷やを出してくれました。そして、たどたどしい日本語で「ごはん大盛り? 中盛り? 小盛り?」と言います。メニューがポカラカリーのみなので、入店と同時にオーダーが通り、いきなり量を聞かれるわけです。ただ、量の目安もどこにも書かれていないので、少々戸惑います。小盛りでオーダー。

夜は大人気のホルモン焼き屋です
夜は大人気のホルモン焼き屋です

 待っている間、向かいに座っていた男女3人を観察していたのですが、ヒーとかハーとかフーと言いながら大量の汗をかきかき、スプーンを口に運んでいます。片手には卓上のティッシュボックスから何枚もティッシュを取り出し、汗や涙や鼻水を拭いています。

客1「辛いですよね?」
客2「辛くないわけないでしょ」
客3「これを辛くないって言う人がいたら舌か頭がイカれてると思うよ」

 殺気立った空気です。大丈夫なのか…? そうこうするうちに、筆者のポカラカリーとサラダが登場しました。

ポカラカリーライス(800円・サラダ付き)。小盛り・大盛りでも値段は同じ。ただし女性のみ小盛りを頼むと700円におまけしてくれます
ポカラカリーライス(800円・サラダ付き)。小盛り・大盛りでも値段は同じ。ただし女性のみ小盛りを頼むと700円におまけしてくれます

 赤と茶色の中間のような輝く色で、シャバシャバのスープ系。ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、インゲンなどの野菜は、後入れでごろっと大きくカットされて入っています。

 恐る恐るカレーをすくって一口食べてみます。ん? 辛くない…。トマトの酸味、玉ねぎの甘み、そして、具である牛スジの旨味でしょうか。さらっとしているのに、コクがある。全然辛くありません。むしろ少々甘い。牛スジはよく煮込まれていて柔らかく、プルプルしていて美味。

 食べ進みます。すると、ん? 辛い。と思った瞬間から、どんどん辛い。いや、めちゃくちゃ辛い。知らず知らず辛い階段をかけ上ってしまったのでしょうか。辛すぎます。もうポカラを食べ続けることができず、サラダに逃げる。ポカラをすくう。水に逃げる。ポカラをちょっとすくう。福神漬けに助けを求める。といった具合に、ポカラカリーとの距離感を測りつつ、及び腰で食べ進むしかありません。

辛さの助けになるサラダ
辛さの助けになるサラダ

 その様子を見かねたのか、店員さんが「辛いデスカ?」と聞いてきます。思わず「辛くないわけないでしょ」と答えたくなります。だって、辛くしたのはあなたたちじゃないですか…! とぶつけようのない怒りがわきますが、どうしようもありません。

 昨今の激辛料理店は、レベル1~10といった表示がありますが、ポカラにはそんな親切な説明はありません。さらに食べ進むと、鼻水が垂れ、涙が出るほど辛いのです。食べ終わるころには、唇が腫れているのではないかと思うほど。舌も唇もヒリヒリ。

 ここで、ネパール人女性に質問。
筆者「これはネパールのカレーなのですか?」
店員「ソウデス」
筆者「スープのベースには何が入ってるんですか?」
店員「牛スジデス。あとジャガイモデス」
筆者「いつ頃からこのポカラカリーをやっているのですか?」
店員「7~8年前? よくワカリマセン」
筆者「何故、こんなに辛いんですか?」
店員「辛いデスカ?」

 と、結局、核心に迫ることができず。

 しかし、店を出て10分もすれば、辛さはあっという間に引いていき、旨さの余韻が残ります。「あれ? また食べたいかも」。そんな後を引く不思議なカレーなのです。

 あとで調べてみると、「ポカラカリー」なるものはネパールには存在せず、「ポカラ」はネパールの地名。おそらく、ネパール母さんが考えたオリジナルのカレーなのでしょう。日本のお母さんが作る「肉じゃが」のように、真似ができない唯一無二の味なのかもしれません。

 しかし、どう美味しいかを伝えにくい。結局、行く前と行った後の情報は、さほど変わらず。ただなんか人に伝えたくなるカレーなんです。というわけで、ぜひ食べてみてください、ポカラカリー、怪しげですが、ヤミツキになる味ですよ。

(撮影・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

ホルモン焼き 夏冬 外観

店名:ホルモン焼き 夏冬

住:東京都港区芝大門1-8-4
TEL:03-3431-0552
営:11:30~13:30頃まで
  17:00~23:00頃まで
  土・日は17:00~23:00頃まで
休:祝
※ランチは、ネパール母さんのポカラカリーライスのみ