白ごはんとの相性が抜群の「だんだんめん」

『はしご』の看板商品はもちろん「だんだんめん(担々麺)」(900円)です。これをベースに、ザーサイや蒸し鶏、カレー味の排骨、太肉(チャーシュー)をのせるトッピングバージョンがあります。
「だんだんめん(担々麺)」以外にも、「支那そば」(しょうゆ味の中華そば)各種もありますが、ほとんどの人が食べているのはやはり「だんだんめん」。中でも太肉や排骨をのせたガッツリ系のタイプが人気のようです。
今回、頼んだのはシンプルな「だんだんめん」。注文時に必ずお店の方から「ごはんは付けますか?」と聞かれます。これはぜひ「はい」と答えましょう。無料だし、小さな茶碗で少量なので、少食の人でも食べられるはず。逆に足りないときはおかわりも自由です。そして何より、このご飯が「だんだんめん」を味わい尽くすのに欠かせないアイテムなのです。

最初にごはんが供されます。ここで多くのお客さんが、卓上にある刻みタクアンをごはんにのせます。このタクアンがしょっぱすぎず、甘すぎず、絶妙な塩梅でとても美味しい。ぜひこの状態でスタンバイしてください。
そうこうしているうちに、「だんだんめん」が登場します。満席の場合、着席してからの待ち時間は10分ほどでした。

「だんだんめん」のビジュアルは、赤くて濃くて、どろどろと粘度が高そうに見えますが、実は真逆。辛さは控えめで、サラサラとしています。表面は芝麻醤やラー油で覆われていますが、実は下は醤油ラーメンのスープなんです。

『はしご』の「だんだんめん」の特徴は、この醤油スープと芝麻醤の二層が織りなす、絶妙なコントラストにこそあります。ストレートの細麺が、醤油スープに浸って旨味を吸い、すくいあげるときに上の層のゴマの風味やコク、甘み、辛味をまとう……。
だから、麺自体がものすごく美味。あっさりなのにコク深い。しかも、ときどき柚子の香りも舞うなど、中華というより、和のテイストがベースに横たわっているイメージ。どこかおしゃれな味わいなんです。

そして、このスープが、ご飯とタクアンに実によく合うんです。大げさでなく、このご飯とタクアンなくして「だんだんめん」の本当の美味しさは語れない、とさえ言いたくなるくらい、ピタリと合うのです。

おそらく陳建民氏がアレンジした担々麺よりも、この「だんだんめん」は、さらに日本人の舌にグッと寄り添うよう、考え抜かれて考案されたのでしょう。何しろ、味噌汁とごはんを食べているような、安心感すら感じるのです。
後で調べてみると、こちらの創業者は、陳建民氏の弟子であった料理人・久田大吉さんの元で学んでいたそうです。本格的でありながら和の心が生きた唯一無二の「だんだんめん」。どうりで美味しいはずだ、と思わず納得したのでした。
というわけで、久しぶりに食べた「だんだんめん」に感激しきり。時代を超えて愛される理由は、やはり、日本人の心をつかむ繊細な味わいにあると思います。銀座に行った際に『はしご』に行ってみてください。しみじみ美味しいですよ!
(撮影・文◎土原亜子)