独自の世界観が楽しい食べ放題のラムしゃぶ
近年、東京ではラムしゃぶ専門店の出店が目立ちます。「金の目」(銀座)に始まり、最近話題の「メリ乃」(秋葉原)、ジンギスカンとラムしゃぶが一緒に楽しめる「羊のロッヂ」(高田馬場)など、少し考えるだけでもいくつも店名が出てきます。
ところで、渋谷駅からほど近い並木橋交差点が、一部の羊好きの間で「羊交差点」と呼ばれているのをご存知でしょうか? もともと「羊門」というものすごく目立つ看板のジンギスカン店があり、その店が交差点の向かいにオープンさせたのが、今回ご紹介するラムしゃぶ専門店「ひつじの湯」。4,800円(税別・飲み放題付き)で、新鮮なラム肉が心ゆくまで楽しめる、なかなか予約の取れない人気店です。
注文すると、薄い出汁の中にラム肉の山がそびえ立つ、フォトジェニックな鍋が登場。さっと火を通した肉を食べてみると、非常にあっさりとしつつも、深い羊の滋味が口中に広がっていきます。これは流行っているのも頷けます。この日も予約なしのお客が何組も入れず退散していきました。ラムしゃぶ人気、恐るべしです。
凝ったデザインの内装からすでに“タダモノじゃない”感を醸し出しているこちらのお店ですが、ラムしゃぶも独自の世界観満載でした。まず、つけだれ。胡麻だれとポン酢まではわかるのですが、なんとトムヤムクン風味のタレがあったり、最後の締めが蕎麦だったり……何かと一風変わっているのです。
この〆の蕎麦がまたポイントが高く、カエシに、羊の風味が大量に出た鍋のだし汁を入れて食べる、せいろタイプの冷たい蕎麦。これが羊の脂をさっぱりと洗い流してくれるのです。
ドリンクコーナーもまた独創的です。ハイボールや生ビール以外は「自分で作る」方式なのです。日本酒や焼酎のみならず、多種多様なお酒があって、色々と楽しめます。私が訪れたときは、ついついハイボールを飲みすぎてしまい、ドリンクコーナーではソフトドリンクを取ったくらいでしたが、次回は色々とオリジナルブレンドで楽しもうと思っています。
どんどん増殖中のラムしゃぶ専門店ですが、各店、さまざまな個性があり、それぞれに工夫を凝らしているようです。年末年始も、ラムしゃぶからますます目が離せません。
羊齧協会のひとくち羊メモ
しゃぶしゃぶはどこから来た?
ラムしゃぶと言うと、「しゃぶしゃぶベースの創作料理でしょ?」なんて思っている人も多いかもしれませんが、実はまったく逆で、ラムしゃぶを日本風にアレンジした料理がしゃぶしゃぶです。諸説ありますが、中国東北地方や北京などで食べられている「シュワン羊肉(シュワンヤンロウ/シュワンはさんずいに刷)」がベースであることが定説だそうです。
中国で食べたことのある方もいらっしゃるかもしれませんが、「シュワン羊肉(シュワンヤンロウ/シュワンはさんずいに刷)」は、真ん中が筒状になった独特の形をした鍋に、牛肉や干貝、クコの実、紅棗(ナツメ)、生姜、長ネギなどのダシを張り、そこに羊の薄切りや野菜、酸菜(中国の白菜漬け)などを入れて食べる鍋で、本当にしゃぶしゃぶにそっくりです。ちなみに、中国ではこの時、羊肉を極薄に切るために、生ではなくわざと凍らせてスライスします。
●SHOP INFO
店名:ひつじの湯 ラムしゃぶ 渋谷並木橋店
住:住:東京都渋谷区渋谷3-14-4 2・3F
TEL:050-5593-9856
営:17:00~24:00(23:00L.O)
休:なし
●著者プロフィール
取材・文/菊池一弘
羊齧協会主席。羊肉を常食する岩手県遠野市出身の父の影響で羊肉料理に親しんで育つ。北京留学中に現地の味に触れたことでその魅力に開眼し、羊好きの消費者団体「羊齧協会」を結成。本業は、コミュニュケーションデザインのプロとして、アドバイザー業務を地方自治体や大学、企業などと行う。
http://hitujikajiri.com/