●からあげの聖地・大分県中津市のからあげはなぜウマい? 日本唐揚協会認定カラアゲニストで、生まれも育ちも大分県中津市のライター・松本壮平氏が本場の名店『からあげの鳥しん』の魅力をご紹介
コンビニの数よりも唐揚げ屋の数が多く、“からあげの聖地”として全国的な名声を誇る大分県北西部の中津市。市内だけで50~60軒のからあげ店がしのぎを削る、まさにからあげ激戦区です。中津からあげを語るうえではハズせない名店の一つに、『からあげの鳥しん』があります。
店主は生まれも育ちも中津市という角信一さん。生粋のからあげ好きが高じて、2002年に自身のお店『からあげの鳥しん』を立ち上げたからあげ職人です。子供の頃から近所の精肉店でからあげを買い食いしていたそうで、「50円でも、せせり(首)を3等分したものを揚げてくれたりしましたね。中津らしいでしょ」と笑います。
そんな角さんがこだわるのが、極上の醤油ダレ。これは完成までに10年以上を要したという秘伝のタレ。これを使って揚げるからあげで、同店は日本唐揚協会主催「からあげグランプリ」の西日本しょうゆダレ部門で最高金賞を5回、金賞を8回受賞するなど、名店としての評価を不動のものとしました。
「特にムネ肉からあげの味には、日々磨きをかけています」と角さんが語る通り、こちらはモモ肉はもちろん、ムネ肉のからあげにも定評があります。鶏のからあげといえばモモ肉が定番で、ムネ肉は「淡白」「パサつく」などのイメージを抱く人も多いと思います。実際に調理も難しい部位ですが、実は中津では古くからムネ肉からあげも同等に人気。そしてこの鳥しんのムネ肉からあげは、まさに絶品なのです。
食べれば食べるほどにお腹が空いてしまう不思議な美味しさ!
今回はこちらでモモ肉とムネ肉が一緒に味わえる「骨なしミックス」(100g・280円)と「ブツ切り」(100g・270円)をいただくことに。
からあげは、蒸れて衣がベチャベチャにならないよう、口の空いた袋で提供されます。芳香に鼻をくすぐられ、胃袋が一気に目を覚ましました。まずは噂のムネ肉からいってみましょう。衣は極薄。唇に触れただけで、衣の向こうに蓄えられた美味しさが伝わってくるようです。
そして軽く歯を立てたとたんに鶏肉の味が口いっぱいに拡散。う~ん、ウマい! どこか心がホッとするようなやさしい味わい。淡白さもパサつきもまったくありません。じんわりと全身に染み渡るような美味しさです。数個食べてみましたが、まったく飽きがきません。食べれば食べるほどお腹が空いていくような魔力を秘めた美味しさ。角さんが磨きをかけてきたことがよくわかる逸品です。
当然モモ肉も美味。こちらも見事なまでの薄衣で「パリッ!」という爽快食感がたまりません。筆者は常々「ムネ肉からあげの美味しいお店にハズレはない」と思っているのですが、まさにその代名詞的な旨さです。
骨付き肉も混ざる“ブツ切り”は、最近は関東地域でもちらほら見かけるようになりましたが、まだ全国的にはメジャーになりきれていない中津ならではのからあげ。いろんな部位を楽しめるので、筆者はこれが大好き。骨付きの部分もありますが、気にせず手づかみでワシワシ食べられるのが醍醐味です。
肉の旨みが染み込んだサックサクの衣と、しっかりと味わえる肉の旨みを堪能したら、残った骨に付いた衣を歯の先で引っかけるようにして食べ尽くしましょう。骨周りの肉のウマさは絶品のひと言です。
このブツ切りからあげ、中津市内の多くのからあげ専門店で購入可能なので、中津を訪問したらぜひ味わってほしいですね。この魅力が全国に広がることを願っています。
●SHOP INFO
店名:からあげの鳥しん
住:大分県中津市宮夫218-1
TEL:0979-23-5232
営:11:00~19:00
休:月曜
●著者プロフィール
松本壮平
ライター・編集者。一般社団法人日本唐揚協会認定カラアゲニスト。生まれも育ちも「からあげの聖地」である大分県中津市。美味しいからあげを求めて東奔西走する「から活=からあげ探索活動」に明け暮れている。