伝統を受け継ぎつつ進化させていく一子相伝の老舗精肉店のからあげ

筆者は常々「お肉屋さんや焼鳥屋さんのからあげにハズレなし」と言ってきました。鶏肉を熟知したプロが作るからあげはとにかく美味しい。そして中津市内で50年以上続く精肉店『豊国畜産ぶんごや』の正規直営店『あげ処ぶんごや』も、そんなお店の一つです。
テイクアウト専門のこのお店、扉を開けて店内に入ると屋外とはまるで別世界。得も言われぬいい香りに包まれます。満腹状態でもこの香りに接したとたんにお腹が空いてきてしまう不思議な空間。

『あげ処ぶんごや』を初めて訪れたなら、ぜひ食べてほしいのが「骨なしもも身」(100g・290円)と「手羽先」(100g・250円)。前述の通り、作り置きはせず、オーダーが入ってから揚げていくのが中津からあげの流儀。魅惑的な揚げ音と、からあげの芳醇な香りに包まれながら待つことおよそ6~7分でからあげが完成します。
精肉店のからあげというだけあり、肉の鮮度は抜群。明治38年創業の『田中醤油』で特注した甘口の醤油のほか、ニンニク、ショウガなどで味付けしたからあげは、揚げたてで香りも最高。この香りだけでご飯が食べられそうな芳香です。

まずは「骨なしもも身」は衣と肉の一体感がとにかく素晴らしい。揚げたてアツアツ、ヤケドに気をつけながら歯を入れていくと、衣が肉を巻き込むようにして口中に侵入してきます。肉の旨みがしっかり溶け込んだ肉汁が、衣をじわじわ溶かしながら渾然一体となっていく食感と旨さは、まさに唯一無二。
醤油ベースですが、意外とあっさり。肉本来の旨みとバランスよく調和しています。これぞ王道とも言うべき中津からあげの味わい。思わずゆっくり息を吐くように「う、ウマい…」と声が漏れ出てしまいます。全身に美味しさのエキスがじわじわと浸透していくようです。

続いて手羽先。これまた肉厚で可食部豊富なのがウレシイ。手羽先は骨付きなので食べにくい印象がありますが、こちらのものは骨離れ良好。肉汁と共に肉がスルリと舌の上に飛び出してきてくれます。このほかにもムネ肉や手羽元、砂ずりなどのからあげもあります。好みのものに出会えそうですね。

こちらのからあげ、店主・西郡さんのお父さんの代から始まっていたそうで、肉だけでなく水や塩にまでとことんこだわっています。そんなお店で生まれ育った西郡さんいわく、「伝統の味を受け継ぎながら、時代に合わせて少しずつ進化させている」とのこと。まさに一子相伝の味。
まとめ

からあげの美味しさは言うに及ばず、西郡さんの明るく元気な接客にもファン多数。わざわざ遠方から買い求めに来るお客さんも多くいます。未体験の人は、ぜひ一度味わってみてください。本当に美味しいですよ。
●著者プロフィール
松本壮平
ライター・編集者。一般社団法人日本唐揚協会認定カラアゲニスト。生まれも育ちも「からあげの聖地」である大分県中津市。美味しいからあげを求めて東奔西走する「から活=からあげ探索活動」に明け暮れている。