日の丸弁当、のり弁を食べてみた

さっそく2つを持ち帰って開けてみます。
「日の丸弁当」は、ごま塩が付属しており、蓋を開けると、中央に笹の葉が1枚、梅干しを守るようにして入っています。それをめくると、まごうことなき“ザ・日の丸弁当”。さすがに梅干しだけでは寂しいので、ごま塩を全体に振りかけてみました。

食べてみると、店員さんの言葉どおり、適度にブレンドされたもち米のおかげで、ご飯がもっちり甘くて最高です。そして梅干しは、薄い皮を破ると、とろけるような梅肉があふれます。酸っぱくてほんのり甘く、そしてちゃんとしょっぱい。加えて、全体に気品も感じます。

この梅干しの塩味だけでご飯がどんどん進みます。最初にごま塩をかけてしまったことを激しく後悔。噛めば噛むほどご飯の旨みが広がります。地球上のあらゆる食材を並べたとて、このご飯に合うおかずは、ひと粒の「十郎梅」をおいて他にない、と確信するほどピタリと合っているのです。
海の風味が香る「のり弁」は贅沢の極み

続いて「のり弁」を開けてみると、一面に海苔が敷き詰められていて黒光りしています。その海苔をぺろんとめくってみると、大きな椎茸、ふっくらの梅干し、奈良漬がお目見え。ご飯にはたっぷりと鰹節がまぶしてあります。

店員さんから聞いたように、ただの“おかかご飯”ではありません。牡蠣の旨みがお米一粒ひとつぶに染み込んでいて、ものすごく風味豊かです。海苔と一緒に食べると、磯の香りが顔の周りに充満してくるよう。
日の丸弁当を頬張りつつ、のり弁をたまにつまむ、という、見る人が見れば度し難い食べ方をしてすら、目に見えない贅沢を非常に感じるのです。
そういえば、『米屋』さんには、牡蠣や穴子を盛った豪華なお弁当もあり、店先では大いに惹かれました。その絢爛さから目を背け、シンプルこの上ないこの2品を選んだ結果、わかったのは、真の贅沢とは見た目とは関係ない、ということ。
そんなわけで、新宿で伊勢丹に立ち寄ることがあれば、ぜひ『米屋(めしや)』の日の丸弁当、のり弁を試してみてください。シンプルなのに滋味深い味わいに、心癒されると思いますよ。
(撮影・文◎土原亜子)