千葉在住ライターが、東京の友人に自慢したい、“ピーナッツだけじゃない”県内のおいしいものを気ままに紹介。房総を拠点にした「食」にまつわるあらゆるものを見つめた、飲んで・食べて・知る千葉の風土&food記です。
徹底した品質管理&ビール愛で発信する、“とりあえずじゃないビール”。
(千葉県長生郡長南町)
商品に対する愛情がダダ漏れになっているお店ほど、そこで過ごす時間が楽しく、心地よい場所はありませんよね。たとえ自分に知識はなくても、多彩な陳列を眺めているだけでワクワクして、気づいたら店の奥へと足を踏み入れてしまっているような、不思議な引力のあるお店。それが“いい店”の定義だとしたら、こちらの空間もその一つでしょう。
店の名は「ちょうせいや」。長生郡長南町の田園地帯に、突然現れるレトロな酒販店ですが、実はビール党には一目置かれるクラフトビール専門店。週末ともなると、銚子や船橋などの遠く離れた県内各地、さらには都内からもわざわざ常連客が訪れるほどです。
こちらの空間を作り上げたのが、店主の鈴木徳典さん。実は数年前まではいわゆるディスカウントの酒販店でした。
「うちの店は、昭和28年に祖母が始めた商店が出発点です。当時は食品や雑誌類なども扱っていたそうですが、周囲にコンビニができるに従って、14年ほど前にディスカウントの酒屋に鞍替えしたんです」
当時は神奈川でサラリーマンをしていたという鈴木さんですが、店が転機を迎えたことをきっかけに、「おばあちゃん孝行をしたいなと思って」、実家に戻り店を継ぎました。しかし、ディスカウント店という業態のため、常に価格競争にさらされることになり、徐々に疲弊していきます。そんな時に出会ったのがクラフトビール。店で販売している大手メーカーのものとは異なる、“ゆっくり味わうスタイル”の個性的なビールに魅せられたといいます。
「初めてクラフトビールを飲んだ時、その日の晩酌が惰性ではなかったんですよね。じっくりビールと対峙して味わえたというか。それで、“あ、こういうものを売りたいな”って思ったんです」
こうして数年前からクラフトビール専門店として再出発。同様の店は千葉県内ではまだ数少ないですが、その幅広い品揃えから口コミで徐々に評判が広がり、今では多くのビール党の信頼を集めるお店になりました。
ところで、店内にはどんなビールが並んでいるのでしょうか? 早速のぞいてみることにしましょう。