外房のクラフトビール文化の牽引役! 挑戦する酒屋「ちょうせいや」を訪ねて。〈前編〉【房総food記】

千葉在住ライターが、東京の友人に自慢したい、“ピーナッツだけじゃない”県内のおいしいものを気ままに紹介。房総を拠点にした「食」にまつわるあらゆるものを見つめた、飲んで・食べて・知る千葉の風土&food記です。

徹底した品質管理&ビール愛で発信する、“とりあえずじゃないビール”。

(千葉県長生郡長南町)

外房のクラフトビール文化の牽引役!挑戦する酒屋「ちょうせいや」を訪ねて。<前編>【房総food記12】
国内ブルワリーはもちろん、海外産のものも豊富に揃う。店主の鈴木さん自身が実際に味わい薦めてくれるものだから、信頼度も高い。 | 食楽web

 商品に対する愛情がダダ漏れになっているお店ほど、そこで過ごす時間が楽しく、心地よい場所はありませんよね。たとえ自分に知識はなくても、多彩な陳列を眺めているだけでワクワクして、気づいたら店の奥へと足を踏み入れてしまっているような、不思議な引力のあるお店。それが“いい店”の定義だとしたら、こちらの空間もその一つでしょう。

 店の名は「ちょうせいや」。長生郡長南町の田園地帯に、突然現れるレトロな酒販店ですが、実はビール党には一目置かれるクラフトビール専門店。週末ともなると、銚子や船橋などの遠く離れた県内各地、さらには都内からもわざわざ常連客が訪れるほどです。
 こちらの空間を作り上げたのが、店主の鈴木徳典さん。実は数年前まではいわゆるディスカウントの酒販店でした。

「うちの店は、昭和28年に祖母が始めた商店が出発点です。当時は食品や雑誌類なども扱っていたそうですが、周囲にコンビニができるに従って、14年ほど前にディスカウントの酒屋に鞍替えしたんです」

 当時は神奈川でサラリーマンをしていたという鈴木さんですが、店が転機を迎えたことをきっかけに、「おばあちゃん孝行をしたいなと思って」、実家に戻り店を継ぎました。しかし、ディスカウント店という業態のため、常に価格競争にさらされることになり、徐々に疲弊していきます。そんな時に出会ったのがクラフトビール。店で販売している大手メーカーのものとは異なる、“ゆっくり味わうスタイル”の個性的なビールに魅せられたといいます。

「初めてクラフトビールを飲んだ時、その日の晩酌が惰性ではなかったんですよね。じっくりビールと対峙して味わえたというか。それで、“あ、こういうものを売りたいな”って思ったんです」

 こうして数年前からクラフトビール専門店として再出発。同様の店は千葉県内ではまだ数少ないですが、その幅広い品揃えから口コミで徐々に評判が広がり、今では多くのビール党の信頼を集めるお店になりました。
 ところで、店内にはどんなビールが並んでいるのでしょうか? 早速のぞいてみることにしましょう。

店主の鈴木さん。どんなに基本的な質問をしても、わかりやすく&幅広い情報を教えてくれる“ビールの伝道師”。鈴木さんの解説を聞いていると全部飲みたくなってしまう。
店主の鈴木さん。どんなに基本的な質問をしても、わかりやすく&幅広い情報を教えてくれる“ビールの伝道師”。鈴木さんの解説を聞いていると全部飲みたくなってしまう。
通常は酒販店関係者にしか配布されない商品の保管方法の説明書も、場合によっては1本ずつ付けてくれることも。「だっておいしく飲んでほしいじゃないですか」
通常は酒販店関係者にしか配布されない商品の保管方法の説明書も、場合によっては1本ずつ付けてくれることも。「だっておいしく飲んでほしいじゃないですか」
レジ横には、鈴木さんが集めたクラフトビール関連の書籍が並ぶ。中には造り手が読むような本格的な資料もあって興味深い。もちろん閲覧可能。
レジ横には、鈴木さんが集めたクラフトビール関連の書籍が並ぶ。中には造り手が読むような本格的な資料もあって興味深い。もちろん閲覧可能。