抹茶スイーツにはなじみがあるのに、抹茶を「飲む」となると茶道のイメージが強いせいか、敬遠しがち。そう思っている方にこそ楽しんでいただきたい。コーヒーブレイクでもなければティーブレイクでもない、日常的マッチャブレイクのススメです。
前回に続き「一保堂茶舗東京丸の内店」でほぼ毎月開催している無料試飲会レポート。伺ったのは秋の抹茶の試飲会。数種の利き抹茶、石臼で茶葉を挽く体験に続き、今回は抹茶を点てる体験の巻。
「抹茶を点てるのは初めて」という人も大丈夫!
前回は、今まで抹茶を飲んだことがないという日本人がいて驚いたが、抹茶を飲むことって日常的じゃないのね、と改めて実感した筆者。今回は抹茶を点てたことがないという人がいても驚きません。抹茶を点てた経験がある人といえば、茶道や飲食関係、それからこのような体験レッスンでということになるのだろうか。あとは、単純に抹茶が好きでお家で日常的に飲んでいる人とか。
一度に体験できる人数には限りがあるものの、みなさん興味津々の様子。ほとんどの方が初めて茶筅を持つという。広報担当の川越順子さんのレクチャーのもと、2~3人で一緒に抹茶を点ててみることに。
シャカシャカしてあっという間にできあがり!
一人分の抹茶の目安は、茶杓(抹茶をすくうための道具)で1杯半。茶碗に入れる際には抹茶を濾すのを忘れずに。濾すことでダマがほぐれ、仕上がりもなめらかになる。一人分なら茶漉しが便利。
抹茶の風味を引き出すのに適したお湯の温度は約80℃。約100℃の熱湯を別の茶碗に移し替えたのち、抹茶茶碗に入れる。あらかじめ抹茶茶碗を温めておくとなおよし。
茶筅で抹茶とお湯をまんべんなく混ぜる。混ぜると聞くとつい渦巻きのようにぐるぐる回してしまいがちがだ、英字の「m」を描くようなイメージでシャカシャカ。m? m? 「m」にばかり気を取られているとわけがわからなくなりそうだが大丈夫。どんどん、泡立ってくる。
抹茶とお湯が充分に攪拌できれば完成。シャカシャカしてものの10秒余りで不揃いで大きな気泡が、次第にきめ細やかに。ぎこちなく茶筅を振っていた方々の「おおお!」といった表情に、美味しそう! という満足感と、上手に点てられたという安堵が垣間見える。
「ほらね! 難しいことなんてないでしょ。抹茶とお湯を混ぜて飲むだけなのよ。茶がらも出ないし、飲みきりよ」と、抹茶の声を代弁してみる。
抹茶茶碗で飲まない。新スタイルの楽しみ方も
茶碗で点てた一人分は茶碗ごといただくのが本来のスタイルだが、試飲会では1碗分をお猪口サイズの器に小分けしていただく。
お気づきの方もおいでかと思うが、この抹茶茶碗、片口なのだ。もちろん、この注ぎ口から飲むわけではない。片口で抹茶を点てるのは本来のスタイルではない。ということは試飲会のためだけのものかというとそうではないらしい。川越さん、これは……?
「ご提供したように、点てた抹茶を小分けして注ぐことができるように考えた“みんなで楽しむ抹茶のための急須”です。片口で抹茶を点て、ご家庭にあるデミタスカップなどにサーブして楽しむのも素敵だと思います」
老舗の日本茶専門店が提案する現代風の抹茶スタイル。マッチャブレイクをもっと日常に取り入れたい筆者にはとてもしっくりくるし、なにより、この利き茶の会、内容が充実しすぎです!
(※利き茶の会の内容は毎月異なります。抹茶は年1〜2回の開催)
●DATA
店名:一保堂茶舗 東京丸の内店
住:東京都千代田区丸の内3-1-1国際ビル1F
電:03-6212-0202
営:11:00~19:00
料金:無料
※次回の利き茶の会は「お茶で祝うお正月」。大福茶(玄米茶)と新春用特別抹茶の試飲や、おもてなしのアイデアとして片口の使い方や器の合わせ方などを紹介する予定。12月21日(水)13~19時。詳細はHPにて。
●著者プロフィール
取材・文/笹森ゆうみ
ライター。太宰治の短篇『不審庵』を読んで茶道に興味を持ち、茶道教室に通い始める。茶の湯はお稽古やお茶会でしか触れられないものではないと強く思い、日常生活でお茶を喫する時間を楽しむようになる。お酒の次に抹茶が好き。