酒質や度数はどう決める?もろみを搾る工程「上槽」|今さら聞けない日本酒

酒質や度数はどう決める?もろみを搾る工程「上槽」|今さら聞けない日本酒
食楽web

日本酒、楽しんでますか? 米と水で醸されることは知っているけれど、実際、それがどのように作られ、日本酒となっていくのか、知らない人も多いのでは? 麹、酵母、醪、発酵……。確かに難しそうに思える日本酒用語。けれど、その基礎を知っておくだけで、日本酒はもっと身近に、もっと楽しく、美味しいものになることは間違いありません!

 もろみがあらかたの発酵を終えると、次はいよいよそのもろみを搾っていく工程だ。この作業を「上槽」と呼び、その搾り方には大きく分けて3つの方法がある。まず、「槽搾り」という方法。これは槽(ふね)と呼ばれる、まさに船の形に似た道具を使って行われるもので、上槽の語源になった昔ながらの方法だ。目の粗い布製の酒袋にもろみを詰め、槽の中に重ねるように並べて上から圧力をかけて酒を搾り出していく。時間がかかるが、もろみにストレスをかけることなく搾れるので、やわらかで品のある酒ができあがる。

「槽搾り」の様子
「槽搾り」の様子

 その一方で、現在の上槽の主流となっているのが、自動圧搾機による搾りだ。これはじゃばら状になった大きな布袋にもろみを流し込み、両脇から圧力をかけて酒を搾っていくもの(アコーディオンのような形状の機械、といえば分かりやすいかもしれない)。タンクからホースで圧搾機にもろみを送るため槽搾りに比べると手間がかからないというメリットがある。それだけでなく、時間も短縮化されるため酒の酸化の心配も少なく、酒質が安定しやすい。

 そして、3つ目が「袋吊り」。これは酒袋にもろみを詰めてタンクの上に吊るし、圧力をかけることなく自重によって滴り落ちた酒を集めていく方法。無理な圧力でもろみの粒子が潰されることがないため、きめ細やかで香り高い酒ができる。このタンクに集まった酒を一斗瓶に直接注ぐ酒を「斗瓶取り」といい、最高品質の酒として新酒鑑評会などにも出展される酒となる。

 なお、上槽の工程で最初に搾られてくる淡く濁った酒を「あらばしり」といい、ぴちぴちとしたフレッシュさと荒々しい味わいの酒になる。アルコール度数はやや低めだ。そのあらばしりの次に出てくる透明な酒は「中取り」(中汲み、中垂れともいう)と呼ばれ、雑味が少なく、味わいも香りもバランスがとれた酒質になる。日本酒の中では一番酒質がよいとされるのがこの中取りになる。そして、上槽の最後に搾られるのが「責め」だ。圧力をかけて搾り出されるためもろみの成分も混ざり、雑味は出てくるもののその味わいはどっしりとし、アルコール度数も高くなる。

●著者プロフィール

監修/栗原信利

東京農業大学農学部醸造学科卒業後、兵庫県の酒蔵で蔵人として働き、町田市に本店を持つ「さかや栗原」の店主に。全国小売酒販青年協議会会長、International SAKE Challenge日本人審査員も務める。2017年3月には、町田駅近くに「立ち呑み栗原」をオープンした。