「もろみ造り」=仕込みとは?【前編】|今さら聞けない日本酒

「もろみ造り」=仕込みとは?【前編】|今さら聞けない日本酒
食楽web

日本酒、楽しんでますか? 米と水で醸されることは知っているけれど、実際、それがどのように作られ、日本酒となっていくのか、知らない人も多いのでは? 麹、酵母、醪、発酵……。確かに難しそうに思える日本酒用語。けれど、その基礎を知っておくだけで、日本酒はもっと身近に、もっと楽しく、美味しいものになることは間違いありません!

 第6回からはもろみ造りについて紹介していく。「一麹、二もと、三造り」でいうところの「造り」にあたり、日本酒業界ではこの工程を指して、「仕込み」と呼んでいる。

 日本酒造りも、この工程まで来ると、ようやく酒らしくなってくる。いわゆるタンクのなかで、白く濁った液体がぶくぶくと泡立っている、あれだ。これは前回前々回と説明した酒母に、米、米麹、水を加えたもので、この中でもろみのアルコール発酵が進んでいくのである。

 ただし、仕込む分だけの米や米麹、水を酒母の入ったタンクへ一度に全量を加えることはない。その量が多すぎると、もろみの中の乳酸や酵母の密度が薄まってしまい、野生酵母や雑菌が繁殖しやすくなってしまうからだ。そのため、もろみ造りでは米と米麹、水を4日間3回に分けて投入する。これを三段仕込みという。江戸時代から続く日本酒の伝統的な仕込み方で、多くの日本酒がこの三段仕込みを採用している(中には四段仕込み、十段仕込みといった日本酒もある)。

 この三段仕込みにおいて、米、米麹、水を加える一度目を「初添え」、中1日あけて行う二度目を「仲添え」、最後の3度目を「留添え」と呼び、米と米麹を投入する量は、仲添えは初添えの倍、留添えは仲添えのさらに倍の量を投入する。つまり、その投入量は、1:2:3の割合。こうして段階を踏んで米と米麹、水を加えていくことで、もろみの酸度や酵母の密度を保ちながら、野生酵母や雑菌の繁殖を抑えるのだ。それだけでなく、もろみの温度管理をしやすくし、酵母にアルコール耐性をつけるという目的もある。そのため、日本酒は醸造酒でありながら、もろみの末期に20度を超える高いアルコール度数が生成されていくのである。

もろみ造り 三段仕込み

●著者プロフィール

監修/栗原信利

東京農業大学農学部醸造学科卒業後、兵庫県の酒蔵で蔵人として働き、町田市に本店を持つ「さかや栗原」の店主に。全国小売酒販青年協議会会長、International SAKE Challenge日本人審査員も務める。2017年3月には、町田駅近くに「立ち呑み栗原」をオープンした。