千葉在住ライターが、東京の友人に自慢したい、“ピーナッツだけじゃない”県内のおいしいものを気ままに紹介。房総を拠点にした「食」にまつわるあらゆるものを見つめた、飲んで・食べて・知る千葉の風土&food記です。
ガラス使いのヒントにあふれた併設カフェは憩いの場。
(千葉県山武郡九十九里町)
前編に引き続き、今回も九十九里に本社を構えるガラス製造メーカー「菅原工芸硝子/Sghr スガハラ」(以下、スガハラ)のお話です。
フレンチをはじめ多くのシェフたちから支持されている「スガハラ」のガラス食器。新作まで含めたそれらを実際に使って食事ができるのが、本社工房の敷地内にある併設カフェ「Sghr cafe」です。
「以前よく言われたのが、うちの製品は贈り物にはいいけど、自分で使うのにはちょっと高嶺の花なところがあるし、どうやって使っていいかわからないということ。そこで、もっと暮らしに寄り添ったガラスであることを知ってほしくて、このカフェを始めました」と菅原裕輔社長。「凝った料理じゃなくても、気に入った器に盛り付けるとこんなに楽しいんだということを感じてもらいたかったので、レストランではなくてカフェというカジュアルな形態にしたんです」。
九十九里産のシラスや県産の豚肉を使ったパスタ、千葉名産のピーナッツバターを使ったオープンサンドなど、地元産の食材を上手にアレンジした料理がそれぞれに合うガラス食器で提供されます。器使いはもちろん、レシピや盛り付けもすぐに真似してみたくなるものばかりで、食後に同じ食器を隣接するショップで購入する人も多いとか。これらのレシピ開発と器のセレクトを担当しているのが、菅原社長の妻・加代子さんです。
「もともと料理は好きだったのですが、主人から“ガラスを普段から使ってもらえるような、参考になるようなことをこのカフェでやってほしい”と言われて始めました。せっかく手作りのガラスの器を使うのだから、料理も手作りのものを提供したいと思ってメニューを考えています」。
たとえば、トマトたっぷりの鮮やかなキーマカレーと真っ白な深皿の組み合わせにハッとしたり、唇が吸いつくような厚みを持ったスープ鉢に温かみを感じたりと、料理と器の相性もぴったりで、実際に使った時の心地よさを五感で立体的に感じることができます。おいしいものを食べながらガラスの使い勝手を体感できるなんで、これ以上の説得力はありませんよね。
ガラスの可能性を追い求めて職人たちと切磋琢磨する社長を、料理を媒介にして支える夫人。夫婦二人三脚の歩みがそこにはありました。