旅慣れた人は「旨いものが食いたければ、タクシーの運ちゃんに聞くのが一番」と言う。ならば、東京の美食情報をタクシー運転手に聞いてみたらどうなる? ということで白羽の矢が立ったのが、一部でプロ級の舌を持つと噂の運転手・荒川治さん。今回は、荒川運転手が「夢にまで見る」と言う弁当を教えてもらった。それは蓋が閉まらないほどてんこ盛りのからあげ弁当。そのお弁当屋『大黒屋』(東京・元蓮沼)まで、案内してくれる。
はみ出落ちるから揚げ弁当に唖然!
僕がこのお弁当を知ったのは4年前。知人からの紹介で、「驚愕の唐揚げ弁当がある」と教えてもらったのがきっかけです。唐揚げには並々ならぬ思いがある私としては、いてもたってもいられずに、そのお弁当屋『大黒屋』さんまで、すぐに車を走らせました。
『大黒屋』さんは、徒歩で行くなら、都営三田線の元蓮沼駅から2分くらいの、中山道から少し脇道に入った場所にひっそりとあります。パッと見は、どの街にもよくある弁当屋さんです。
店先には、お弁当屋の写真があちこちに貼られており、メニューを見ると、お目当ての「からあげ弁当」480円と、「からあげライスW大盛り」610円の2種類がありました。もちろんこのガタイの僕ですから、迷うことなく「からあげライスW大盛り」を注文しました。
「今揚げるから5~6分待ってね」と言われます。そう、ここは注文が入ってから1個ずつ揚げてくれるのです。嬉しいですね。
そして登場したその「からあげ弁当」は、僕の想像をはるかに超えていて、唖然としたんです。だって、ゴムでかろうじて蓋をしているものの、唐揚げがこぼれ落ちるほど、はみ出ているんですから。思わず蓋を開けて数えてみると、その数は8個。どれも特大サイズです。一目でわかるほどカラッと揚がっていて、ニンニク生姜醤油と油のミックスされたかぐわしい香りがします。ちなみに普通サイズでも蓋からはみ出る量で、たぶん6個は入っていると思います。
ビニール袋に入れてくれるので、それをブラブラと持ち帰るのですが、毎回、途中で唐揚げが1~2個袋の中にこぼれ落ちています。僕は最初にこぼれ落ちたヤツからつまみ喰いするのを恒例にしています。
はみ出る特大唐揚げの美味しさとは?
さて、その味はというと、まず食感から。「口の中を切っちまうんじゃねえか」ってほど、カリッカリ、パリッパリ系です。かじると人に聞こえるほどの音がします。そして周りは醤油と生姜、ニンニクの香りで充満し、柔らかいお肉を噛みしめると、じゅわ~っと肉汁があふれてきます。大きいので時間が多少たってもなかなか冷めないのが嬉しいですね。
そして『大黒屋』さんのお弁当の美味しさのポイントはもう1つ、「ご飯」です。ふっくらつやつやで、噛みしめると甘みがあって、うまいっす。これは絶対に、無洗米など使わずに、手間暇かけてお米を研いだおふくろ系の白メシです。だから、いっそう唐揚げが美味しく感じられる。真っ白なご飯の上に、カリカリジューシーなから揚げを乗せて……やっぱり、最高ですね。脂×炭水化物って。
僕は、どんなにおかずが美味しい店でも、白飯が美味しくない店には行きません。やっぱり、日本人は旨い白米があってなんぼです。