日本酒が出来るまで。その2|今さら聞けない日本酒【第4回】

日本酒が出来るまで。その2|今さら聞けない日本酒【第4回】

食楽web

日本酒、楽しんでますか? 米と水で醸されることは知っているけれど、実際、それがどのように作られ、日本酒となっていくのか、知らない人も多いのでは? 麹、酵母、醪、発酵……。確かに難しそうに思える日本酒用語。けれど、その基礎を知っておくだけで、日本酒はもっと身近に、もっと楽しく、美味しいものになることは間違いありません!

 さて、前回は麹造りまでの工程について簡単に述べてきたが、ここからはその先に進みたい。「一麹、二もと、三造り」と呼ばれるほど、麹造りが日本酒の製造においていかに重要かを説いたが、今回はその「二もと」についてだ。「もと」とは、酉元(本来は1つの漢字。酉偏に元)と書き、酒母のことを指す。

 酒母は、読んで字のごとく酒の母体となるもので、蒸し米に水、麹米、さらに酵母を添加し、醪(もろみ)の発酵に必要な優良な酵母を大量に培養したものだ。前回、日本酒は米のデンプンを糖化させ、その糖分を酵母が食べてアルコールにすると述べたが、酒母造りはそのアルコール化を促すための第一段階であり、酒造りに適した酵母を大量に培養していく大切な工程なのだ。

 その酒母造りには、大きく分けて速醸系と生もと系の2つがあり、さらに生もと系は、“生もと造り”と“山廃仕込み”に分けられる。では、それらの違いとは何か? 順を追って説明していこう。

 まず“生もと造り”だが、こちらは江戸時代から続く古典的な製法だ。
 酒母造りでは、自然界に存在するさまざまな微生物が入り込んでくる。が、それらの多くは日本酒造りには余計なもので、その微生物の繁殖を抑えるために乳酸菌の力が必要になるのだ。この乳酸菌を自然界から取り込むために、蒸し米と麹米を櫂ですり潰していく“山卸(やまおろし)”という(もと摺りともいう)、非常に手間と人手と時間のかかる製法で行う酒母造りを“生もと造り”と呼ぶ。

 そして、明治後期になって、人手が必要で時間のかかる山卸の作業をしなくても、自然界の乳酸菌を取り入れられることが分かった。米をすり潰さずとも、あらかじめ水に米麹を漬けて溶かすことで乳酸菌を取り込む方法だ。これが山廃仕込みによる酒母造り。つまり、”山卸”の工程を”廃止”した酒母造りであり、正式には“山卸廃止もと”と呼ぶ。これら2つが生もと系に属する酒母造りだ。

 次回は酒母造りの続きを紹介。速醸系について触れていく。

(取材・文◎大西健俊)

●著者プロフィール

監修/栗原信利

東京農業大学農学部醸造学科卒業後、兵庫県の酒蔵で蔵人として働き、町田市に本店を持つ「さかや栗原」の店主に。全国小売酒販青年協議会会長、International SAKE Challenge日本人審査員も務める。町田駅近くに新店舗を準備中。