美味しいビールが飲みたい?松徳硝子の「うすはり」がオススメです【モノ好きの食卓】

ビールが100倍旨くなる、松徳硝子の「うすはり」【モノ好きの食卓】
口をつける食器というのはもはや味の一部と言っても過言ではないだろう | 食楽web

CLASKA Gallery&Shop DOのディレクターであり、日用品からアンティークまで大の買い物好きで知られる大熊健郎さん。そんな“モノ好き”人間のお眼鏡にかなった、食にまつわるモノとコトを紹介します。

 気がつけばもう7月。今年もすでに半分過ぎたと思うと冷や汗が出る思いだが、この時期になると冷や汗だけでなく、汗っかき体質の私はちょっとお昼に外に出ただけで額に汗が噴き出してくるから嫌になる。そんな日はさすがに酒の弱い私だって、冷たいビールで喉を潤わせたくもなります。

 もう何年も前のことだがある夏日の昼時、仕事で日本橋を歩いているとどこからともなくあの香しい鰻のかば焼きの匂いが漂ってくるではありませんか。「今日はちょっと贅沢して鰻でも食べちゃおうかな」なんて気分で思い切って鰻屋ののれんをくぐってしまった。

 席に着き額の汗を拭きながらメニューを広げると、毛筆で「ランチビールあります」と書かれた紙が一枚挟んである。むろん喉はカラカラだ。仕事中とはいえ別にこの後お客さんに会うわけじゃなし、まあいいだろうと注文してしまったのだが、出てきたビールを見て驚いた。冷やしたグラスは見たことないくらい薄くて繊細。一口飲んでさらにびっくり。薄い口当たりがまるでビールの粒子をさらに小さくしたかのようなきめ細かい味わいなのである。口当たりがこれほど味わいに影響するとは恐るべし。これがうすはりとの出会いだった。

 うすはりシリーズを製造している松徳硝子は東京の下町、墨田区にあるガラスメーカーである。元々は電球用のガラス製造工場として大正11年に創業した老舗メーカーだが、電球が次第に機械生産されていく中、手作りにこだわった松徳硝子は生産品目を電球からグラスなどのガラス器へとシフト。その薄くて強度のあるガラス加工技術を応用して生まれたのがこのうすはりグラスである。

 グラスの厚みは0.9mm。これを今でも職人さんが一点一点手で吹いてつくっているというから驚きである。以前「薄いからやっぱり割れ易いのでしょうか?」と恐る恐る松徳硝子の社長さんにたずねたところ、「その薄さが手に取る人の意識に注意を促すので、かえって割れずに長持ちしますよ」というお返事。なるほど、取り扱いに気をつけようという意識が働けばそういうものかもしれない。確かに粗忽さには自信のある私の家でもまだ健在だし…。世界に誇るべき下町生まれのメイドインジャパンなのである。

●著者プロフィール

ビールが100倍旨くなる、松徳硝子の「うすはり」【モノ好きの食卓】

大熊健郎

CLASKA Gallery&Shop DOディレクター。1969年東京生まれ。インテリア会社、編集プロダクション勤務を経て2008年CLASKAのリニューアルを手掛ける。同時に立ち上げたライフスタイルショップ「CLASKA Gallery&Shop DO」ディレクターとして、バイイングから企画運営全般を担う。
http://do.claska.com/