豆の味を見定める「カッピング」の体験に行ってみた【前編】【コーヒープレス古今東西 9話】

挽いた豆にお湯を注ぎ、時間が来たらレバーを押し下げる。そんな簡単ステップで珈琲豆の味わいが堪能できるコーヒープレス。家事の合間に、仕事の休憩に。初心者からプロまで使えるうえに、手間いらずで実用的。なのになぜか、知名度は今ひとつ。使えばきっと好きになる、愛すべきコーヒープレスの魅力をご紹介します。

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食楽web

 豆の特徴など、個性をしっかり味わえるコーヒープレスを使っていると、「もっとコーヒー豆の味の違いを知りたい」という気持ちが湧いてくる。ふだんからいろいろな豆を飲んでみるのだが、果たしてこの経験が役に立っているのかいないのか。

 そこで今回は、豆についてもっと勉強するために『丸山珈琲』が行っている「カッピング体験」に参加してみることにした。カッピングとはそもそも、コーヒーの品評会等で行われるテイスティングの方法のこと。数種類の豆の銘柄を同条件で飲み比べ、その味わいの違いを体感する、というのが内容だ。

 長野県・軽井沢に本店を構える『丸山珈琲』は、独自のルートで買い付けた世界各地のコーヒーを自社で焙煎&販売する会社。長野県と首都圏を中心にカフェも運営している。創業者でバイヤーの丸山健太郎さんは、コーヒー生産国で開催される国際品評会に世界で最も多く参加している国際審査員のひとり、としても知られている人だ。

 さて、期待に胸躍らせて向かったのは、東京・尾山台駅から徒歩5分の場所にある『丸山珈琲 東京セミナールーム』。今回の「カッピング体験」のほか、コーヒーのおいしい抽出法を教える「抽出セミナー」など、一般ユーザーからプロ向けまで、コーヒーの楽しみを広げるさまざまなセミナーを定期的に開催している。

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『丸山珈琲 東京セミナールーム』の入口。住宅街の中だが、尾山台中学校の目の前なので分かりやすい。

 扉を開けると、室内にはすでにコーヒーのよい香りが立ちこめていた。本日の講師は東京セミナールームのマネジャーでバリスタの櫛浜健治さん。平日の午後遅い時間だったせいか、たまたま参加者は30代の男性と私の2名だったが、初心者向けの「カッピング体験」は無料かつ予約不要(!)という何とも太っ腹なコンセプト。はるばる遠くから来る方や近所にお住まいの方まで、週末などは混み合うことも多いようだ。

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本日「カッピング」の方法を指導してくださる櫛浜さん。多岐に渡る『丸山珈琲』のセミナーのほか、出張ワークショップや催事での抽出を担当。スペシャルティコーヒーの楽しみを広めている。

 粛々と豆を挽き、体験の準備を進める櫛浜さんに「どうぞ」とボードを渡される。挟まっていたのは、これから飲み比べる6種のコーヒー豆について、香りや味をメモするための用紙。白紙のスペースが目にまぶしく「こんなにスペースを埋められるほど、私に味や香りの違いが分かるのか……」と一抹の不安が頭にちらり。

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「アロマ」は香りの印象、「酸」は酸味の性質、「甘さ・質感」はどのような甘みだったか、口当たりの質感はどうだったかを記入する。

 とはいえ、家庭で6種類も違う豆を挽いてその違いを比べるなんて贅沢なことは絶対にできない。「違いが分かるのか」という不安が、「違いを分かるようになりたい!」という好奇心に変わっていくのはすぐだった。

 さて、時間ぴったりに「カッピング体験」がスタート。次回はその内容についてお届けしたい。

●著者プロフィール

写真・文/木内アキ

北海道出身、東京在住。”オンナが楽しく暮らすこと”をテーマに、雑紙や書籍、ウェブなどで人・旅・暮らしにフォーカスした文章を執筆。プレスコーヒー歴7年。目標は「きちんとした自由人」。執筆活動の傍ら、夫と共に少数民族の手仕事雑貨を扱うアトリエショップ『ノマディックラフト』を運営中。
HP: http://take-root.jp/