
私の勝手な妄想からオープンした『妄想食堂』。料理人でも料理研究家でもない私、尾仲好太が、これまで食べ歩いた店の味の中で「これが一番旨い」と思う“味の再現”を目指し、試行錯誤しながらアルバイト店員ユースケと今日も日替わり定食を作ります。
ユースケ:店長、また鶏の唐揚げ作ってるんすか?
主人:今日はただの唐揚げじゃないんだ。「山賊焼き」ってのを作っているんだ。
ユースケ:なんすかそれ?
主人:唐揚げにもいろいろなタイプがあってな。北海道では「ザンギ」、九州では「中津から揚げ」とか、ご当地唐揚げがあるが、今日作ろうとしているのは長野名物の唐揚げ「山賊焼き」なんだ。
ユースケ:ずいぶんワイルドな名前ですね。
主人:昔、長野で食べたことがあって、衣が絶品なんだよ。ニンニク醤油ダレが効いていて、香ばしさが際立つ唐揚げだった。でも、名前の由来は、考案した長野県塩尻市の店主が山賊のような風貌だったかららしい……。
ユースケ:一体どんな衣なんですか?
主人:たっぷりと衣が付いてるから、しつこそうに思うが、衣がカラッとサクッとしていて、口に入れると、ほろほろと崩れていくような食感。いざ作るとなると、なかなか難しい。
ユースケ:挑戦してみましょうよ。