
私の勝手な妄想からオープンした『妄想食堂』。料理人でも料理研究家でもない私、尾仲好太が、これまで食べ歩いた店の味の中で「これが一番旨い」と思う”味の再現”を目指し、今日もバイトのユースケと開店前の準備中です。
主人:うちは定食屋だけど、今度、ラーメンも出そうと思ってるんだがな。
ユースケ:いいっすねラーメン。チャチャッとできそう。
主人:お前、甘く見てるな。ラーメンってのは、そう簡単じゃないんだぞ。丼の中の1つ1つにこだわりがあって……
ユースケ:で、何からやります? 店長は肉料理が上手いからチャーシューから作りましょうよ。
主人:お、おう。俺もそう言おうとしてたんだ。俺の理想のチャーシューは、挙げたらキリがないんだが、1つ挙げろと言うなら東京の練馬にある『ラーメン一番』だな。30年前、創業者が作った絶品のチャーシューで、今も秘伝のレシピなんだ。
ユースケ:いきなりハードル上げてきましたね。“秘伝”って弟子以外は作れないって意味ですけど、大丈夫っすか?


主人:もちろん、その味を作れるわけがない。だが、俺があちこちのラーメンを食べ歩いたチャーシューのいいところをアウトプットするつもりなんだ。
