男の妄想食堂。ラーメンの味を爆上げする「至極のチャーシュー」を作る!

継ぎ足しタレの極意

ユースケ:火を止めました。チャーシューって案外、短時間でできちゃうんですね。

主人:いや、チャーシューはそんな簡単なもんじゃない。このあと、蓋を開けて、一晩以上、寝かすんだ。

ユースケ:そうすると味がしみて旨くなるんですね。

主人:まあ、そうだな。しかし、このチャーシューのタレはまだ、最初だから味が若くてそんなに深い味にならん。老舗のタレといえば“継ぎ足し”という言葉をよく聞くだろ。

ユースケ:確かによく聞きますが、あれ、一体何がいいんすか?

主人:作ったばかりのタレは、味にまだカドが立っていてまろやかさに欠けるんだ。そこで、最初に作ったタレを少し残しておいて、次に新しく作ったタレに継ぎ足して加熱する。これを繰り返すことで、元ダレが発酵の元となって、熟成を進め、味に深みとまろやかさが出てくる。

ユースケ:深いっす。

主人:醤油や味噌なども熟成させて旨みを出してるだろ。タレやスープも一緒ってことさ。以前、博多ラーメンの名店『ばりこて』(杉並区東高円寺)のご主人が言っていたけど、あそこのスープは取った後、すぐ使わずに必ず熟成させる。それだけじゃないんだ。必ず、前日のスープの一部を残しておいて、継ぎ足すそうだ。店には店ならではの熟成による旨みのベースがあって、それが店の味。だから毎日、お守りのように入れるそうだ。味も深けりゃ、言うことも深いだろ。

ユースケ:(……卵入れよう)

主人:うちはまだ初めて作ったチャーシューだから、タレが若いしな。お前みたいだ。……お、おい、ユースケ、何してる?

ユースケ:このタレに茹で卵を入れようかと思って。味玉作っちゃえば、一石二鳥ですからね。

主人:おまえ、ちゃっかりしてんな。

翌日の油そば作り

ユースケ:店長、油そば作ってみました~!

主人:え? お前が?

ユースケ:昨日のチャーシューの脂が固まってたんで、それと、カエシのタレを合わせて作ってみたんです。ほら、味玉もいい具合にできましたよ。

主人:美味しそうだな。

ユースケ:まあ、食べてみて下さいよ。

主人:………お。うめーな。チャーシューもなかなかいいが、このタレの塩梅もいいぞ!

ユースケ:そうっすか。ラーメンはスープ作りのハードルが高そうだから、まずは油そばをメニューにしたらどうっすかね。

主人:いいかもな、それ。

ユースケ:ちゃんと昨日のタレをとっておいて“継ぎ足し、継ぎ足し”していきましょう。いつか、美味しいラーメンを出せるようになりますよ。

『妄想食堂』のチャーシューの材料

・豚バラ1本/豚肩ロース1本(ネット入り)/タコ糸

【チャーシューの煮汁】
醤油 300cc/酒 150cc/みりん 150cc/水150cc/砂糖 100g/創味シャンタン 大さじ1/ニンニク 10片程度/生姜 1片/ネギの青い部分 2本分


「バイトの油そば」のレシピ

【材料(2人分)】
太麺 2玉

【ベースだれ】
チャーシューの煮汁 大さじ1/取り除いた脂 大さじ1/オイスターソース大さじ1/創味シャンタン 小さじ1/おろしニンニク 小さじ1/鰹出汁粉 小さじ1/ごま油 小さじ1/酢 小さじ1/胡椒適量

【トッピング】
バラチャーシューの輪切り/肩ロースチャーシューの角切り/玉ネギ/ニラ/メンマ/味玉/卵黄 それぞれ適量

(撮影・レシピ◎尾仲好太、編集・文◎土原亜子)

●プロフィール

尾仲好太

尾仲好太(おなか・すいた)

『妄想食堂』の主人。知人からは超人の味覚、嗅覚、そして胃袋を持つと噂の一般人。旨い料理を食べる、作ることに日夜、妄想を抱き、実際に店を食べ歩き、家で再現する日々を送る。得意料理は、肉料理。