釜浅商店の鉄打出しフライパン【モノ好きの食卓03】

釜浅商店の鉄打出しフライパン【モノ好きの食卓03】
食楽web

CLASKA Gallery&Shop DOのディレクターであり、日用品からアンティークまで大の買い物好きで知られる大熊健郎さん。そんな“モノ好き”人間のお眼鏡にかなった、食にまつわるモノとコトを紹介します。

 料理はしますか? と聞かれれば一応は「します」と答えるものの、まあ男の料理なのでいたって簡単なものばかり。必然的に多くなるのが炒め料理で、肉や野菜を油で炒めて適当に味付けしてハイ終わり、的なものである。

 あるときふと「フライパンのように使用頻度が高いものこそ上等なものを使うべき」などと思い立ち、フライパン探しを始めることにした(とかく何か理由を見つけてはモノを買おうとするのが悪い癖なのだが…)。調査の結果、アメリカ製の某高級調理器具メーカーのステンレス製フライパンに白羽の矢を立てた。

 早速購入して意気揚々としていたのだが、なんと最初の炒め料理をしたとたん、まるで魔法にかかったように表面や外側に一瞬で焦げ跡がついてしまったのだ。しかもこの焦げ跡がこすってもこすっても全然取れないのである。あまりの驚きと怒りで私はそのフライパンを早々に処分してしまった。後々知ったのだが、このフライパンはまず弱火でじっくり油を温めてから決して強火は使わずに調理するのがポイントだったらしい(しかも今流行りの重曹で磨けばきっと汚れも取れたはず・涙)。

 ただ、元来せっかちな私は強火でささっと料理するのが性に合っている。で、さらなる調査を重ねた結果、最終的に行き着いたのがこの釜浅商店の鉄打ち出しフライパンである。打出しとは、その名の通り鉄板を叩いて叩いて叩き締めて立体的に成形するという方法。丈夫であることはもちろんのこと、一般的なフライパンに比べて厚めの鉄板を使うことで蓄熱性が高まり、おいしく焼ける。表面にニスなどの加工をしていないので油を引いて使えば使うほど油が馴染んでより扱いやすい道具になっていくしかけだ。

 実際このフライパンを使うようになって初めて「道具を育てる」という感覚が体感できた気がする。少々無骨なそのお姿もかえってプロっぽく、キッチンの壁に掛かっている風景なんか「なかなかいい感じ」とひとり悦に入っている次第である。


釜浅商店の鉄打出しフライパン【モノ好きの食卓03】
釜浅商店 鉄打出しフライパン 18cm~26cm ¥4000~¥5000+税

●著者プロフィール

大熊健郎

大熊健郎

CLASKA Gallery&Shop DOディレクター。1969年東京生まれ。インテリア会社、編集プロダクション勤務を経て2008年CLASKAのリニューアルを手掛ける。同時に立ち上げたライフスタイルショップ、CLASKA Gallery&Shop DOのディレクターとして、バイイングから企画運営全般を手がけている。
http://do.claska.com/