
「そうだ、京都行こう」というJR東海の有名なコピーがあります。これが生まれたのは1993年。ざっと32年前です。このコピーを見聞きするたびに思うのは、自分を含め、いったい日本人はどんだけ京都に行くことを決意し続ける気なのか、ということです。
神社仏閣が多くて歴史があるとか、どこかしらパリっぽくて文化的とか、老舗の食事がおいしいとか、人によって京都に魅力を感じる部分は異なるでしょうが、人がリピートしたくなるのはたぶん、京都が“なんだかよくわかんない街”だからじゃないかと思っています。

京都は難解なモダンアートのようなところがあります。季節ごとに印象が変わるし、一見客が踏み込めない領域も多い。とっつきやすいけど本音がさっぱりわからない人がたまにいますが、それと同じで、何度かふらりと訪れたくらいでは、京都はなかなか理解できません。
謎めいていると、それを解き明かしたくなるのが人情です。そうして人は「こないだ行った京都、すごいよかった」とか「何度行ってもいいよね、京都」などとふんわりした会話を交わし、「そうだ、京都行こう」と永遠に決意し続けることになるわけです。
そのようにして、性懲りもなくまたこの3月に京都を訪れました。向かったのは、京都屈指の“わかりにくい度”を誇るエリア、祇園。ここでいま、予約が殺到していると噂の気鋭の日本料理店『祇園 静水香(ぎおん しずか)』に行ってきました。