お腹の保養の次は目の保養へ。「三段峡」の渓谷美に圧倒される

のっけから、女将と漬物やきそばのインパクトにノックダウンされた筆者。満腹になったお腹をさすりつつ15分ほど車を走らせると、三段峡の入口に到着しました。入口には他の観光地同様、お土産店などが軒を連ねています。

三段峡は全長16kmに及ぶ西日本最大級の渓谷で、太田川の支流である柴木川による長年の侵食から、深い渓谷が形成されています。その渓谷美から国の特別名勝にも指定されているほど。最奥の聖湖口まで遊歩道が整備されていますが、1日で三段峡の全てを巡るのはとても無理。そのスケールに圧倒されつつも、待ち合わせていたガイドの方と合流して、上流を目指しさっそく散策スタートです。

心地よい渓流の音を聞きながら、鬱蒼と茂った木々の間に延びる遊歩道を進みます。訪れた時期がちょうど紅葉シーズン真っ盛りなこともあり、随所にもみじをはじめ紅や黄色に染まった見事な紅葉が目を楽しませてくれます。マイナスイオンのおかげか、空気も実に美味しい!

遊歩道を進むとすぐに、巨大な石が行く手を阻みました。案内を見ると「狼石」との表示が。石の横を通ると不思議にも「サー」っという音が聞こえます。狼の遠吠え? とも聞こえなくもないこの音の正体は、川のせせらぎの反響音。自然のいたずらに感心しつつ、さらに奥へ。
しばらく歩いていると遊歩道の脇にある少し広めのスペースに目がとまりました。「これは炭焼小屋の跡」だとガイドの方。実は良質な砂鉄が採れるこの地方では、かつて“たたら製鉄”が盛んで、随所に炭焼小屋があったのだとか。こんな山深い場所でも、人々の営みがあったのですね。

この辺りから道幅が狭くなり、アップダウンが少し激しくなってきました。ほどなくして目の前に線を描くようにしなやかに流れ落ちる「姉妹滝」が眼前に。ここは水量により滝の本数が変わるという三段峡の名所の1つ。周囲の紅葉が美しいアクセントとなり実に見事な景観です。

目の前に広がる美しい景観に目を奪われながら歩くこと数十分。少し開けた場所に到着した我々の目に入ってきたのが、渓流の中にドンとたたずむ大きな石。その独特の形状から「兜石」と言われているそうです。周囲には巨大な栃の木が生い茂り、まさに大自然のただ中といった風情。この橡の実を使った「栃餅」もお土産として販売されているとガイドさん。

行く手にはどんな絶景が待ち受けているのか、さらなる期待感を漂わせていたところ、「日も傾いてきたのでそろそろ帰りましょうか」とガイドさんから非情な声が。何とこれまでの行程は三段峡全体のわずか1/10以下とのこと! まだ見ぬ絶景に後ろ髪を引かれつつも、さらなる前進を断念。帰路についたのでした。

無事に三段峡入口付近まで戻ってきたところ、長渕と呼ばれている清流では、SUPを楽しんでいる人の姿が! ガイドさん曰く、三段峡ではさまざまなアクティビティも楽しめるとのこと。峡谷散策にアクティビティ、1日や2日で三段峡の魅力をすべて満喫し尽くすのは難しいことを痛感しつつ、再訪を誓ったのでした。