塩大福の行列店はおいなりさんも絶品|『元祖塩大福みずの』(巣鴨)

続いて、巣鴨商店街にある『元祖塩大福みずの』のおいなりさんです。その名の通り、塩大福の有名店で、連日行列が絶えないお店ですが、実はおいなりさんも人気で、「塩大福」と一緒に買っていくお客さんも多数。筆者も並んで「いなり寿司」(5個・450円)をゲットしました。

見た目は『川直氷室』とよく似ていますが、お揚げの質感はやや粗め、そして濃いめの味付けです。シャリは程よい硬さで口の中で絶妙にほどけ、作り手の技を感じさせます。シンプルな見た目ですが、思った以上に個性的。なのに親しみやすさも感じる。このあたりのさじ加減が愛される理由なのかもしれません。日常食の一品として、クセになる味わいでした。
和菓子のような上品な味わいにうっとり|『いなり寿司 神田明神下みやび』(神田)

続いては、神田明神の参道沿いにあるおいなりさんの名店『いなり寿司 神田明神下みやび』です。看板メニューは、お弁当や笹寿司ですが、もちろんおいなりさんも人気。たっぷりの出汁で煮詰めたお揚げがこだわりで、複数の味を展開しています。今回は、ちょっと珍しい「餅いなり」(800円)をオーダーしてみました。

「餅いなり」というくらいなので、シャリのかわりにお餅が入っているのが特徴。注文後に作りはじめるので、数分、待つことになります。サーブされてからすぐにいただきましたが、お揚げが和菓子のような上品な甘さで、しっかりした味付けです。そして、中のお餅はふっくらモチモチで伸びも良く、お揚げとの相性も抜群でした。
まさに新感覚のおいなりさんです。神田明神の参拝の途中の軽食だけでなく、さまざまなシーンで楽しめるおいなりさんだと思いました。
まさに東京式おいなりさんの基本形|『浅草志乃多寿司』(浅草)

続いては、浅草雷門から数分のところにある『浅草志乃多寿司』のおいなりさん。志乃多寿司ブランドを掲げるおいなりさん専門店は、東京都内に数店がありますが、1877年創業の人形町『志乃多寿司』が発端のようです。江戸時代より庶民の間で親しまれていたおいなりさんを「志乃多」と名付けて売り出したところ、結果的に140年以上も続く人気商品に。というわけで、「6個入り」(640円)をオーダーしました。

「6個入り」という商品名からして、いかにもせっかちでストレートな江戸っ子的ですが、肝心のおいなりさんの味もしっかり東京風。一つ一つはかなり小ぶりですが、甘じょっぱく煮上げられたお揚げは噛み締めるほどにお出汁がにじみ出るしっとり感。そして対照的にシャリは酸味強めでサッパリしています。この甘・酸のコントラストこそが東京式おいなりさんの醍醐味。シーン・季節を問わずいつでも美味しくいただけるおいなりさんです。
80年間継ぎ足し続けるタレのダイナミックな味が光る|『向島まつむら』(向島)

続いてご紹介するのは、下町ならではの、つゆたっぷりのおいなりさんを提供する名店『向島まつむら』のおいなりさん。中に入る具材を年2回、変えるというこだわりのおいなりさんです。都心部からは少々アクセスしづらいエリアにあるお店ですが、筆者が訪れた日も、遠方ナンバーの車が多数買いに来ていました。
ここでは「いなり寿司(6個)」(600円)をいただきます。

まず見た目。粗めのお揚げと、具材の入ったシャリの色合いが上品で可愛らしいです。しかし、いざかぶりついてみると、その味は極めてダイナミック。濃いめの味付けで食べ応えも十分です。聞けばお揚げには80年間継ぎ足しのタレを使用しているとのこと。上品でありながらインパクトのある味は、このタレがポイントのようです。食べごたえも十分で、普段遣いはもちろん、お土産にもピッタリ。ヤミツキになりそうなおいなりさんでした。