『劉の店』同様、アルミ製弁当箱に入れられサーブされる「台湾鉄道弁当」

オーダーから数分後、料理がサーブされました。『劉の店』同様、かつて台湾鉄道で実際に使われていたというアルミ製の弁当箱で登場。思わず「おぉ!」と声が出てしまいます。

この弁当箱は2段重ねになっており、上段にはメインの骨付き豚肉を揚げ焼きした排骨、煮タマゴ、高菜の漬物、野菜などが入っています。そして、下段にはたっぷり敷き詰められたご飯の上に高菜やたくわんなどが乗っています。
排骨からは台湾の香辛料の香りが漂い、懐かしい『劉の店』の「台湾鉄道弁当」そのままです。さっそくかじってみると外はサクッと香ばしく、中は肉の旨みがジュワーっと味わうことができます。

素材の旨みや継承されたレシピのおかげでもある一方で、『驛の屋(えきのや)』のちえさんの丁寧な調理がよくわかる味。もちろん、添えられた副菜の味も全て素晴らしく、『劉の店』の「台湾鉄道弁当」の味わいをきちんと継承していることがよくわかりました。これは名古屋まで食べに来る価値十分です!
「台湾鉄道弁当」以外にも、日本ナイズされていない本格台湾料理の数々が!

ちえさんによれば、この「劉の店伝承(台湾駅弁)排骨飯」を提供し始めてから、実際に東京から、慣れ親しんだこの味を求めてやってくる人も多くいると言います。しかし、『驛の屋(えきのや)』の魅力はこれだけにとどまらず、本格的な台湾料理も数多く提供しています。
「四神湯(台湾では屋台飯と知られる薬膳スープ)」、「薑母鴨鍋(鴨を生姜で煮込んだ滋養効果抜群のスープ)」、「肉圓(肉団子をプルプルした皮でくるんだ蒸し料理)」など、日本国内ではなかなか食べられないメニューもあります。

「劉の店伝承(台湾駅弁)排骨飯」に加え、「野菜炒め」、「肉圓」をオーダーしてみましたが、これがまた美味。変に日本ナイズした味わいではなく、本場・台湾の味で、ちえさんの繊細な調理術を感じるホッとする味わいでした。
『劉の店』から「台湾鉄道弁当」のレシピを無償で継承されたその理由は!?

ここまででわかるように『劉の店』から継承された「台湾鉄道弁当」だけでなく、本格的な台湾料理を楽しめる『驛の屋(えきのや)』ですが、実はここまでくるのには大変な苦労があったとちえさんは言います。
「以前は団体客向けのお店だったことから、コロナ禍で一時お客はゼロになりました。『これからどうしていこうか』と希望の見えなくなってしまったとき、一生懸命考え、ある日1つの夢を持ちました。お店の看板メニューとなる本物のチマキをつくろう。その1つのチマキがダイヤモンドになり輝く日がきっとくると信じて」(ちえさん)

その「本物のチマキ」を作ることに没頭していた頃、ちえさんに劉さんから1本の電話が入り、『劉の店』がお店をたたむことを聞いたそうです。その際、劉さんは、新しい一歩を踏み出そうと奮闘するちえさんを思い、「台湾鉄道弁当」のレシピを教えてあげることにしたそうです。金銭的な条件一切なし。この点も劉さんがちえさんの努力を強く感じてのことでしょう。
後にちえさんは東京に出向き、『劉の店』の看板メニューだった「台湾鉄道弁当」のレシピを継承し、『驛の屋(えきのや)』のメニューに加えることになりました。
調査結果:『劉の店』の「台湾鉄道弁当」が名古屋の『驛の屋(えきのや)』に継承された理由は、料理に関わる店主同士の気持ちの行き来にあった!
現在、『驛の屋(えきのや)』には、ちえさん自身が考えて創り出した「驛の屋 臺灣鐵路便當(台湾駅弁)排骨飯」とともに「劉の店伝承(台湾弁当) 排骨飯」がメニューに並んでいます。
『劉の店』が静かにお店を閉じたあとも、あの排骨の味が名古屋『驛の屋』で食べることができるのは、たくさんの困難を乗り越えながらも、本物の味を追求し続けるちえさんの並々ならぬ努力、そして、その思いに強く共感した『劉の店』の劉さんの情熱によるものでした。
『劉の店』の味に慣れ親しんだ方には懐かしい味であるのはもちろん、ちえさんの台湾料理へのアツい思いも感じられる『驛の屋(えきのや)』。是非食べに行かれてみてはいかがでしょうか。その味・雰囲気はリアル台湾そのものです。
(撮影・文◎加賀ま波・松田義人)