スペキエのカレーをいざ実食!

京王井の頭線「西永福」駅から徒歩1分ほど。細い路地に入ったところに、『スペキエ』はありました。濃紺のひさしと赤い窓枠が印象的で、すでに何ともいえないスパイスの香りが店頭に漂っています。
吸い込まれるように扉を開けると、意外とゆったりした空間が広がっています。カウンター4席、テーブル6席。木の風合いを生かした落ち着く店内です。

店内には、店の外よりもさらに濃いスパイスの香りが充満しています。スパイスが重なり合い、香りの向こうに旨味も感じるような、ものすごく魅力的な匂いなのです。食べる前からすでにただものではない雰囲気です。
着席し、さっそく注文です。メニューは、チキンカレーやキーマカレー、海老カレー、野菜カレーなど単品メニューも充実していますが、初訪店でいろいろ食べたかったので、キーマ、チキン、海老が一度に味わえる「3種のカレー」(1700円)を注文することにしました。

こちらでは注文が入ってからカレーを作り始めるということで、出てくるまでに15分ほどかかります。その間にサラダが運ばれてくるので、それを食べながら待つわけですね。サラダはシャキシャキのレタスに、さっぱり酸味がよく効いたドレッシングが美味しくて、胃袋にエンジンがかかってくるようです。
その数分後にライスも登場。ツヤツヤ光るライスには大根のアチャールとキャロットラペ風の一品が添えられています。白、黄色、オレンジ。色鮮やかで、これまたそそられます。ちなみに、お米は国産コシヒカリだそうです。

そして、いよいよ3種類のカレーが登場しました。直径10cmほどの器が3つ。素朴で温もりを感じる器に、これまた実に美しいナチュラル色のカレーたち。

最初は「海老カレー」から。すくった感じはサラリとしています。口に含んだ途端に海老のダシがガツンと来ました。まるで海老のビスクのような甲殻類の濃厚さが舌に広がります。黄色くてマイルドそうな見た目に反し、かなり辛いです。エビの強烈な味とスパイスの強烈な刺激。ひと口目から、めまいがしそうなほど美味しいです。
続いてキーマカレー。インドの乾燥した香草が載っていて、スプーンですくうと粗めの挽き肉がたっぷり入っていてどろっどろ。口に入れると、クローブやカルダモン、シナモンなどの香りの高いスパイスがキーマからにじみ出るコクと絶妙に絡み合い…これまたかなり辛いのですが、ひと噛みごとに強い旨味がガツン、ガツンと押し寄せてきます。スゴい!

最後は、チキンカレーです。こちらはスプーンですくうと欧風カレーっぽいとろみがあり、中には鶏モモ肉(国産)がゴロゴロと3つ入っています。一見、マイルドそうに見えるチキンカレーも、やっぱり辛い! 辛いながらもカルダモンの強い芳香に癒され、静かに感じる甘みや酸味も手伝って、どんどんスプーンが進む…なんとも複雑で滋味深いカレーなのです。
まとめ

夢中で完食してしまいました。「美味しい」という言葉だけで表現するのは無理があります。スパイスの使い方が秀逸だとか、食材を活かしているとか、いろいろ言うことはあるのかもしれませんが、そんな陳腐な言葉を超えた何かがありました。
そして表面だけ見ると意識高い系なのに、誰もが美味しいと思える味。となると、やっぱりカレーマニアの言う、“控えめに言ってめちゃくちゃ旨い”という言葉が一番しっくり来るなあと思った次第です。
(撮影・文◎土原亜子)