あっさりを食べてみて改めてわかったこととは?

店の前に到着し、いつもの赤を基調した店を見て、パブロフの犬のようにこってり味が想起され、思わず喉が鳴りそうになります。でも今回は「今日は絶対に“あっさり”を頼むぞ!」と固い決意を胸に入店。席に案内され、改めてメニューを広げてみます。
左面に定食メニューがずらり。天一の定食は、「ラーメンと唐揚げとご飯」、「ラーメンと豚キムチとご飯」、「ラーメンとホルモン野菜炒めとご飯な」などボリューム満点です。しかし、その写真を眺めていて気づいたんですが、定食セットの写真は、すべて「こってり」ラーメン。「あっさり」も「屋台の味」も選べるにもかかわらず、見本は全部「こってり」なんですね。

数えてみると、メニューには「こってり」の画像が20以上も! この強力なサブリミナル効果のせいか、さっそく決意が揺らぎ始めます。やっぱり「こってり」が食べたくなってきました。そう、天一に来たら「こってり」がどうしても欲しくなるのです。でも、今日のミッションは「あっさり」を食べること。ならば2杯食べるか…。でもさすがに多すぎる…。
しばし考えていて、いい方法を思いつきました。それは「選べる麺とサイズ」というサービスを利用する方法です。天下一品では、普通麺と細麺を選べるほか、大(1.5玉)、特大(2玉)、そしてミニ(半玉)をチョイスできるのです。

つまり、こってりのミニサイズ「ちょこってり」(790円)とミニサイズラーメンの「あっさり」(790円)の2つを注文しようという作戦です。麺が半玉なので、2つ頼んでも1杯分の量。胃にも負担がありません。ただ、この頼み方だと2つで1580円になり、少々お高くなりますが、渾身のスープを2つ味わうためなので致し方なし。
というわけで、こってりとあっさりのミニサイズをダブルで注文。待つことしばし、登場したのがこちらです。

いつもの丼よりやや小さめの小丼に、こってりとあっさりが並びました。かわいい&妙に嬉しい。濃厚さマックスの「こってり」から食べると味がわからなくなりそうなので、まずは、濃い色のスープに背脂が浮かぶ「あっさり」から味わっていきます。

具材はチャーシュー、メンマ、青ネギ。スープを飲んでみると、鶏ガラスープをベースに野菜や背脂、ニンニクなどが溶け込んだ深いコク。色は濃くても醤油のトゲトゲしさはなく、とてもまろやかです。そして時折、一味の辛さをピリリと感じます。
「こってり」のような粘度はなくても、麺をすするとスープが適度にからみつきます。「こってり」には及ぶべくもありませんが、「あっさり」のスープも、そこそこ濃厚なコクや旨味をたたえていることがわかりました。

続いて、「こってり」も食べてみます。ポタージュのようなとろみがあり、舌の上で旨味・甘み・コクがどんどんふくらみます。期待どおりの安定の美味しさなのですが、今日は「あっさり」のすぐ後に食べているので、より一層、濃厚さとどろどろ感が際立ちます。そして今度は、「こってり」と「あっさり」を交互に食べていくことに。

しかし食べ進めていくうちに、なぜか「あっさり」のほうに多く箸とレンゲが進むことに気づきました。我ながら「ウソでしょ?」と思ったのですが、「あっさり」を口にすると、妙に安心できるというか、ホッとする。つまり「あっさり」を2すすって、「こってり」を1すする。この比率がちょうどイイことに気づいたわけです。
そのうち、さらにいいことを思いつきました。「こってりとあっさりを両方があるんだから、その中間の味を自分でいろいろ作ってみよう」とひらめいたのです。「あっさり」ラーメンに、「こってり」スープを少しずつ入れてみます。

こってりとあっさりの中間味である「屋台の味」(通称:こっさり)は食べたことがありますが、今回は、自分のさじ加減で自由自在に調節して自分好みの“あいがけ”を作れるのです!

というわけで、両方を注文した結果、「こってり」は唯一無二の味ではあるのですが、「あっさり」を食べてみると、その魅力もしっかり感じられました。「あっさり」と「こってり」。どちらか1つを決めるならば、今後もやっぱり「こってり」を選ぶとは思いますが、ダブルで注文する方法もかなり面白いです。2つの味だけでなく、第3の味も楽しめるうえ、胃もたれ感も少ないのです!
お財布に余裕があるときには、ぜひ、このミニラーメン2つという食べ方も試してみてください。余談ですが、兵庫県にある『天下一品 三田店』には「三田スペシャル」というメニューがあり、それは、まさに「こってり」と「あっさり」がセットになっているそう。ぜひ、全国の天一でもこれを定番にしてもらえたら嬉しいな、と思った次第です。
(撮影・文◎土原亜子)