釜めしに入っているあのゴボウが主役になっている!「鶏ごぼうそば(日替わりのそぼろゴハン)」

「峠の釜めし」で、おかずの主役と言ったらおそらく、鶏肉とか味シミシミのしいたけ、存在感たっぷりのタケノコを連想しますが、そんな中、どちらかといえばひっそり佇んでいる? 名脇役的な存在のゴボウのささがきが鶏肉と一緒に主役を張っているのが「鶏ごぼうそば」。お前、こっちに来て出世したな、と思わず心の中でつぶやいてしまいます。
「釜めしと同じではないんですよ。鶏の旨煮と揚げゴボウ、ネギ、水菜がトッピングになっています。元々、『おぎのや』では『鶏ごぼう弁当』を販売していまして、鶏とゴボウの組み合わせはお馴染みなんです」。そのお弁当のスキルをこの店のお蕎麦にも活かしたってことなんですね。

そして、今回一番聞きたかった質問。なんで釜飯のお店なのに、蕎麦?「あはは。我が社は元々、お蕎麦もやっているんですよ。横川駅や軽井沢駅の駅そばはうちが運営しています。釜めしの印象が強いですが、知っている人は『おぎのや』が蕎麦を出すのは当たり前なんですよ」。えっ、そうだったの!?
横川駅や軽井沢駅利用者または食べたことがある人、長野や群馬の人にとっては、『おぎのや』は釜めしだけではなく、蕎麦やお弁当販売もやっている会社、ってことのようです。今回気になって、おぎのやのHPを見たら、営業種目に各種弁当販売、麺類製造販売の文字が。さらに、駅構内営業(売店)、飲食事業部(ドライブイン・レストラン等)、そして石油類の販売、医薬品の販売という文字も衝撃です。
アオサとネギの清涼感とシラスの旨味が抜群!ひんやり限定「しらすあおさそば」

そして、「ムシムシした日や食欲があまりない、という時に特におすすめのお蕎麦ですね」と出されたのが、「しらすあおさそば」(880円)。もちろんこれにも日替わりのごはんがセットになっています。
日替わりのゴハン、この日は上州牛のそぼろとタケノコのゴハンでしたが、「日によってシャケ飯や鶏めしなどを、2回りぐらい小さなミニ釜めしの器で出しております」。このゴハン用の器、ちょこっとした感じが愛おしい。この器、お客さんに欲しいって言われませんか?「お客さまの中には、ここで扱っている器を売ってほしい、と言われることもあるのですが、神田と有楽町の店限定の器で、販売できるほど数はないんですよ」。
カウンターの席に座ると、そばの器、ご飯の器、夜メニューの器など、さまざまなバージョンの釜めしの器がガラス越しに置いてあるのが見えて、それもインテリアの一部になっています。ちなみにこのお蕎麦の器、「峠の釜めし」の器より1~2回り大きいもの。いわゆるかけそばの器の口径とほぼ同じと思ってください。
上州牛に信州サーモン! 群馬と長野の名物&地酒を味わうディナータイム

ディナータイムは蕎麦の店から気軽に飲める店に変わります。ここからのメニューは信州名物や上州名物、そして『おぎのや』らしさを感じる個性的なメニューが色々。
蕎麦のメニューでもあった「峠の釜めしのアタマ」(858円)や、「鶏ごぼう唐揚げ」(3個528円)のほか、しめには「峠の釜めし」が1100円で食べられます。「峠の釜めしのごはん(だけ)」(308円)、という渋いメニューも。
「夜のメニューは、群馬県と長野県の美味しいものを食べてもらいたいですね。上州牛や信州サーモンはもちろんですが、他に、釜めしの具材をちょっとアレンジしたおつまみメニューも充実しています」。ここでしか味わえないものが色々ある、ということですね。
そして料理に合わせるお酒も、群馬と長野の地酒がこの日は11種ラインナップ。「地元の人にとっては馴染みのあるお酒で、首都圏では見たことのない日本酒、長野県松本市にあるクラフトビールなどを扱っています。あとは、『峠の釜めし』のアンズを使用した『荻野屋サワー』(638円)もぜひ飲んで欲しいですね」。

美味しい地酒を地元で発掘すべく、日本酒のラインナップは変わるそうなので、シーズンごとにチェックするのもおすすめです。ちなみに「女鳥羽の和泉 山廃純米酒」(858円)は「酸味と旨味のバランスの取れた、釜めしにもおつまみにもあうお酒」とのこと。それは気になる!
ビールもそうですが、ウイスキーも「信州MARS BLENDED」、焼酎は群馬の「マラソン侍」など、セレクトがご当地愛溢れすぎな、独特すぎるラインナップになっています。
改めて、なぜ蕎麦にうるさそうな神田に出店したのかを聞くと、最初に有楽町のガード下に『荻野屋 弦』を出したことをきっかけに、神田のガード下にも、という話から、2号店としてオープンしたそう。「なので、『おぎのや』が神田で蕎麦に挑戦! ということではなく、うちは釜飯だけではなく蕎麦もやっていますよ、幅広い提供をしています、ということを知って欲しいと思ったのがきっかけです」。なるほど。たまたま神田のガード下になった、ということでしょうか。
コロナの影響で、群馬・長野エリアにでかけられない人に、『おぎのや』の味を食べてほしい、群馬・長野と東京を結ぶことをテーマに掲げている『荻野屋 弦 神田』。食べているうちに、この冬はスノボ行けるかなぁ~、とか、あの温泉、久々に行ってみたいなぁ、など、群馬や長野の思い出がふとよぎってきます。今は無理でも、いつか世の中が落ち着いたら、電車に乗ってのんびり旅に出たいなぁ…という気持ちになるお店でした。
(取材・文◎いしざわりかこ)