ピラフのようで違う独創的な味わいの「プロフ」とは?

JR高田馬場駅からほど近い商店街「さかえ通り」沿いのビルの3Fに『サマルカンド・テラス』はありました。扉を開けると、予想外に明るくてコンクリート打ちっぱなしのスタイリッシュなカフェ空間。そこかしこに中央アジアの雑貨が置かれていて、おしゃれな店内にまず驚きました。店内にある黒板のメニュー表に書かれていたランチメニューは4品。「プロフセット」、「ラグマンセット」、「スープセット」、「ケバブセット」です。
スープとケバブはなんとなく想像がつきますが、前述の「プロフ」と「ラグメン」がピンと来ません。そこでウズベキスタン人の店員さんに聞くと、「ラグマン」は中央アジア一帯で食べられている手打ち麺だそう。そして「プロフ」は、同様に中央アジアのお米料理で、食材や味は各家庭で違うようですが、大きな鍋で牛肉や羊肉をスパイスと一緒に揚げ焼きにしたのち、生米・ヒヨコ豆・野菜を入れて炊きこんで作るとのこと。
なるほど、最初に肉を揚げ焼きにすることで、鍋の中に旨みのベースを作るわけですね。なかなか手が込んでいます。今回のお目当ての「プロフ」はお米料理なので、おかずになりそうな「ケバブ」を選んで、2人でシェアすることにしました。

ちなみにこのお店には、店内にプロフ専用の窯鍋が設置されており、そこで、大量にプロフが作られています。というわけで、最初に運ばれてきたのは「プロフセット」です。横にはうす焼きのパンと、別皿でサラダが付いてきます。カラフルでなんとも美味しそう!

プロフの上には牛肉、そしてウズラの卵、青唐辛子がのっています。まずはプロフだけをスプーンですくってみると、ほのかなクミン&コリアンダーの香り。お米はアルデンテでちょい硬め。そして1粒1粒がオイルに包まれていてパラパラしています。食感はパエリアに似ていますが、香りがめちゃくちゃエスニック。炊き込みご飯や釜飯とはまったく違いますね。
なかでも圧倒的な存在感を放っているのが、甘~いニンジンとほっくり香ばしいヒヨコ豆。牛肉は繊維がホロホロほどける柔らかさで噛むほどに旨みが染み出す味わい。全体が口の中で一体になると、ニンジンの甘みが最初に際立ちます。ニンジンってこんなに甘かったっけ? と思うくらい。

お米をよく噛み締めていくと、しっかり牛肉の味が染み込んでいて旨みたっぷり。これは後を引く味です。友人も「そうそう、コレコレ。まさにこの味だった!」と言ってパクパク食べています。食材は馴染みのものばかりなのですが、お米の食感、ニンジンの甘み、ヒヨコ豆の香ばしさ、スパイスの加減。やっぱり食べたことがない新鮮な味でめちゃくちゃ美味しいです。
さて、そうこうしているうちに「ケバブセット」も登場しました。

「ケバブセット」は、牛ミンチ肉を串に巻きつけたシシケバブ2本。揚げ餃子(コブルマ・バラク)、チーズや挽肉などを薄い生地で包んだラザニア風の料理、そしてトマトスープ、トルティーヤ状の薄いパンという構成です。
ケバブは、粗挽きの肉々しいタイプで、日本のつくねに似ていますが、味は粗挽きのハンバーグといった感じ。とにかく肉々しさ満点で、こちらもまた噛むたびにジューシーな肉汁が口内にほとばしります。うーん、これは絶対ビールに合うはず!
揚げ餃子は1個が手のひらサイズの大きさで、しかも皮がしっかり厚め。ガリッとした食感で、かじると中から挽肉と玉ネギが登場。これをトマトのスープにつけて食べると、酸味がアクセントになって、これまた非常に旨し!

というわけで、初めて体験したウズベキスタン料理は、どれもどこかで見たことや食べたことがあるようなビジュアルなのに、食べてみると想像とは違う味わいで、ひと口ごとに驚きがありました。

やはり国や気候風土が違っても、料理や食文化は自然に広がり、それぞれの地域で独自の進化をしていくんだな、と改めて感じるとともに、これをきっかけにこれまで行ったことがない中央アジアを旅行してみたくなりました。気軽に世界を旅できる日が早く戻ってくるといいですね。
(撮影・文◎土原亜子)