肉から野菜、惣菜まで揃う高級グルメスーパー

お店は西麻布の星条旗通り沿いにありました。外観からして異国を思わせるお洒落なお肉屋さんです。中に入ると、目に飛び込んでくるのは、肉、肉、肉! 牛・豚・鶏まで、日本でいま注目されているブランド肉がズラリと並んでいるのです。その美しい肉色を見ているだけで、思わずため息が出てしまうほど。

精肉はすべて生産農家から直接仕入れたものだそうで、肥育方法や肥育期間、血統などを厳選したうえで、その時々の最高のブランド肉が並ぶとのこと。もちろん、精肉だけでなく、味付けした焼肉用の肉や、ローストビーフやコンフィなど調理惣菜も多数あります。

また、精肉以外だと、低農薬の新鮮な野菜類、ヤザワミートの通販で大人気だという餃子やシュウマイといった冷凍食品に調味料、パスタや海苔などの乾物まで、選りすぐりの食材がよりどりみどりなのです。もはやなんでも揃う高級グローサリーといった様相を呈しています。
その中で、気になるコーナーがありました。それがベーコン、ソーセージ、ハムなどの加工肉エリアです。

そこに並ぶ加工肉は、すべて保存料や着色料、化学調味料などを一切使わず、1つ1つ店内工房で手作りしたもの。ちょうどこれを手がけている肉職人・枝澤竜太さんが店頭にいたので、お話を聞いてみることにしました。
枝澤さんは料理人として10年間のイタリアでの料理修業の際にハム作りの名人に出会い、2年、3年と時間をかけてじっくり熟成する生ハムやサラミなどの豚肉加工品の魅力に取り憑かれたそうです。

枝澤さんいわく、「肉のプロとして肉本来の美味しさを伝えたいので、発色剤やソーセージの生地に粘性をもたらす添加物、過度な甘みやうま味調味料の添加を一切使用せずにつくっています」とのこと。添加物に頼ることなく、肉本来の味わいを引き出すことにこだわる、まさに料理人がつくる加工品です。
ちなみに、枝澤さんが全国の豚肉の中から選んだブランドは、徳島県産の阿波美豚。色々試した中で、とくに阿波美豚は加工肉に特に合う力強さと繊細な味を持っているのが決め手だったそう。
「肉の挽き方、熟成の仕方、天然のスパイスやハーブなどの使い方などを工夫し、表情の違う加工肉を楽しんでほしいですね」と枝澤さん。

せっかくなので、色々なソーセージを買って、実際に食べてみることにしました。まずはボイルしただけのフランクフルト。パリッとした皮にナイフを入れると肉汁が飛び出てくるようなソーセージも美味しいですが、それとは一線を画する味わい。肉がきめ細かくて食感豊か。そしてふんわり柔らかくて実にまろやか。噛みしめるほどに旨味が口中に広がります。

続いて、「白ソーセージ」。これは、阿波美豚と黒毛和牛をミックスして使用しているそうで、ハーブの清々しい香りと、肉の深いコクが身上。これも何本でも食べられそうな優しい味です。

そして、飛ぶように売れるというコロッケについても聞いてみると、「うちでは“本日の揚げ物お惣菜”を出していて、コロッケには、村上農場の熟成のじゃがいもと阿波美豚のベーコンを入れてるんですよ」と枝澤さんが教えてくれました。

そのコロッケをいただいてみると、じゃがいものほっくり&ねっとりした甘みの中に、ベーコンの深い薫香とやわらかな塩味を感じます。ひと口ですっかり虜になりました。ベーコンがじゃがいもの旨さを最大限まで引き出す完全無欠のコロッケ。居住まいを正してナイフとフォークで食べたくなるような贅沢な味で、人気商品になっているという理由が、食べてみてよくわかりました。
というわけで、『白金矢澤精肉店』は、最高級の黒毛和牛だけでなく、こだわりまくりのコロッケやフランクフルトなども買える新しいタイプの精肉店。肉好きの人は、ぜひ一度訪れてみては?
(撮影・文◎土原亜子)