個々の味を混ぜていただくと、三位一体となり、より複雑な味に!

メニューとお皿をオーダーすると、無駄がない動きで調理を始めます。店内にはやや緊張感が走りますが、梶川さんはここでもまた先ほど聞いた「すだちご飯」の香りを嗅がせてくれたりと、むしろ場の空気を和ませてくれるような、気さくな対応をしてくれます。
オーダーから数分後、ようやく「カジランカリー」が筆者の前にサーブされました。その彩り、ボリューム感ともかなりオシャレでインパクトのあるものでした。

さっそく「レッドカリー」からいただきます。オイリーである一方、複雑に入り混じるスパイスブレンドがまさに絶品。そして冒頭の梶川さんの解説にもあった生キクラゲの食感との相性も面白く、結構クセになる味。

また、イエローカレーのほうは、鶏肉のキーマで、肉の柔らかさから言ってかなり丁寧に煮込まれていることが素人の筆者でもよくわかりました。

さらに、その真ん中に乗せられたスパイス角煮もこれまたホロホロで、食べ応え十分。これら個々でも十分美味しいのですが、さらに混ぜ合わせていただくと三位一体となり、より複雑かつダイナミックな味になりました。もちろん、これらのカレーのパンチに対するすだちご飯のサッパリとした風合いの相性も抜群であり、味のバランスがかなり緻密に計算された味だとなりうまい!
並行して行う洋服屋の仕事との兼ね合いと、客の不満ができるだけ出ないようにするため、この営業スタイルに

このうますぎる「カジランカリー」をいただきながら、梶川さん本人に話を聞いてみました。「完全予約制」「営業時間限定」などには理由があるそうです。
「もともと私は洋服屋をやっていました。新型コロナ以前は、洋服の展示会などの出張で年に10~15回、東京や福岡に出向いていましたが、カレーが大好きで、その度に各地のカレーを食べ歩いていました。『カレー屋をやりたい』という思いはありましたが、まだ洋服屋のほうが当初思い描いていたカタチではなかったので、まずはそこに集中し、ようやく安定したところで、この物件をお借りする機会に恵まれ改装をし、オープンしました。
『完全予約制』『曜日限定』『昼限定』にしたのは、私自身がワンオペでご提供させていただくことと、私自身、洋服屋のほうも並行してやっているためです。午前中から午後までは『カジカリー』。15時からは洋服屋のほうに行き、22時頃まで仕事を行っています。どちらも本業という大谷翔平スタイルでやっています(笑)」(カジカリー店主・梶川さん)
前述の通り、そのときどきの旬の食材をより良くカレーに反映させていますが、お店の動向や予約などに関してはほとんどインスタグラムのストーリーで告知されるのだそうです。
「私一人でやっている店ですので、起き電話もないですし、基本的にはインスタグラムでこちらで発信する情報をチェックしていただき、予約などをしていただければ幸いです。お店が流行りすぎると、どうしても事故が起こりやすくなります。『座れなかった』『こうだとは思わなかった』など。こういった不満が出ないように心がけており、今は正直数字的な採算は取れていませんが、長い目で見ればリピートしていただけるはずだと思って、このスタイルでの営業をしています」(カジカリー店主・梶川さん)
全国的に見てもかなり独特の営業スタイルのカレー店ですが、その味もまた他店では絶対に味わうことができない個性的で美味しいものでした。かなり病みつきになる味でもあり、これを書いている筆者は今も「もう一度食べたい!」と思ってしまうほどです。鳥取エリアの方、近県の方はもちろん、遠方から食べに行ったとしても絶対に損はないお店です!
(撮影・文◎松田義人)