荻窪ラーメンの原点を体験する

店に入ってみると、中央に大きなテーブル席があり、4人がけのテーブル席やお座敷もあります。いわゆる今どきのラーメン屋さんとはちょっと趣が違います。しかもメニューもお蕎麦やうどん、そして天丼・カツ丼といった丼モノ、一品料理などもあり、その中に「中華そば」が混じっています。
そうです。『春木家本店』は、実はラーメン専門店ではないのです。

一瞬、蕎麦も食べてみたいと思いましたが、今回はやはり醤油ラーメンを食べる気満々だったので、“最古の東京ラーメン”と謳っている「中華そば」(720円)を注文。5~6分ほどで登場したのがこちらです。

濃い色の醤油スープ、細い縮れ麺、三角形に飛び出した海苔、メンマ、そして厚切りのチャーシュー。加えて、今回は煮卵をプラスしたので、ひと目で味が染みまくっているとわかる白身&黄身も鎮座しています。これぞザ・中華蕎麦。思わず立ち上がって拍手したくなるほどの美しいビジュアルではありませんか。

細く縮れた自家製の細麺を箸で持ち上げると、手仕事による繊細さを感じる縮れ具合。麺をすするたびに鼻に小麦の香りが抜け、そこに魚介出汁の芳香とコクが追随してくるのです。「ウマッ! これスゴい! さすが!」と何度も心の中で叫びたくなるほどの美味しさ。

チャーシューは肉厚で、しっとり柔らか。ちゃんと味が染みています。麺も具材も食べ尽くし、あとは、スープに残るネギを追いかけてレンゲを動かします。まさに永遠に飲みたくなるようなスープ。しみじみと旨い。

帰り際に、レジでお店のご高齢のおばちゃんに、「とても美味しかったです」と伝えると、「ああ、ホント? よかったわ~」と言われ、少し言葉を交わしたのですが、やはりこの店こそが“荻窪ラーメンの発祥”の店であり、『春木屋』さんとは親戚関係だとわかりました。
ともあれ、『春木家』が、創業90年経った今もなお、その荻窪ラーメンのレベルを押し上げている……そう思うと感動しきり。というわけで、皆さんもぜひ、『春木家』の中華そばを食べてみてください。筆者は次にここの蕎麦を食べてみたいと今からワクワクしています。
(撮影・文◎土原亜子)
●SHOP INFO
店名:春木家本店
住:東京都杉並区天沼2-5-24
TEL:03-3391-4220
営:11:00~15:00、17:00~21:00
土日祝11:00~20:30(LO)
休:木曜
http://harukiyahonten.jp