チャーシューを色々な角度から楽しめる!

新橋といえば、今も昔もサラリーマンの街。会社員たちのために、路面店、ビル内に飲食店がひしめいています。そんな新橋で会社勤めをしていた秋山さんは、その頃からチャーハンを食べ歩いていたそうです。今回、『三陽』さんの「チャーシューチャーハン」を推す理由を聞いてみました。

――『三陽』さんはどんなお店ですか?
「新橋駅の烏森口を出て烏森通りを進んだ路地裏にある、創業1982年の老舗の町中華屋さんです。新橋は、名店と言われる高級中華料理屋さんや、それこそチャーハン専門店もあるので色々食べ歩きましたが、僕がサラリーマン時代、特によく通ったのがこの『三陽』さんでした。
――ジャンルとしては町中華なんですね。
「そうですね。町中華なので色々なメニューがあり、僕の上司はここのタンメンが好きだったし、同僚はオムライスを頼んでいたり……みんなそれぞれ好きなメニューがあったと思います。もちろん、僕はチャーハンです!(笑)」

――やっぱり(笑)。チャーハンに種類はあるんですか?
「ベーシックなのは〈チャーハン〉(700円)ですが、〈チャーシューチャーハン〉(950円)というのもあって、僕はそればかり食べていました。ぶ厚いチャーシューが3枚、チャーハンの上にどかんとのってるんですよ。さらにその上にメンマやほうれん草といったトッピングも」
――“チャーシューチャーハン”というと、角切りのチャーシューがゴロゴロとのってるイメージですが、チャーシューがそのまま添えられてるのは珍しいかもしれませんね。なんだか、チューシュー麺のような感じも……
「そう! まさにチャーシュー麺のトッピングみたいでしょ。でも大きな違いとして、チャーシュー麺は汁(スープ)がありますが、チャーハンには汁がないわけです。つまりこの場合のチャーシューは汁を吸わない。だからこそ、面白い部分もあるんですよ」
――どういうことでしょう?
「最初はこのチャーシュー、ひんやり冷たいんです。だから、ハムを食べているよう感じ。でも熱々のチャーハンにのっているので、時間の経過とともにチャーシューにチャーハンの熱が伝わって、脂部分がトロンとしてきて、肉もどんどん柔らかくなってくるんです。イメージとしては、前菜の冷たいハムを食べた後、温かいメインの肉を食べるみたいな感じです。この変化がとても面白いんです」

――なるほど、チャーシュー麺はスープを吸って柔らかくなりますが、このチャーシューチャーハンの場合、ご飯の熱で柔らかくなるんですね。
「その通りです。そして、このチャーシューは醤油で甘辛く煮込んだタイプではなく、昔ながらのあっさりした味わい。味の濃いチャーハンと一緒に食べるとちょうど良い塩梅になります。別に付いてくるスープに浸してもおいしい。まさにチャーシューを色々な角度から楽しめるチャーハンなんですよ」

――深いですね〜。では、肝心のチャーハン自体はどんな味ですか?
「ここのチャーハンはしっとりタイプです。でもごはん自体、粒立ち感はしっかりしているので、噛むと食感がしっかり感じられます。そしてラードがしっかり効いていて旨味が濃い。この濃さがあっさりチャーシューとピッタリ合うんです」

というわけで後日、筆者も『三陽』さんに行ってきました。お店はカウンター7席とテーブル3つの小さなお店。カウンターではご年配の男性お二人が切り盛りしていました。
2人の連携で手際よく完成した「チャーシューチャーハン」。いただいてみると、確かに最初は冷製チャーシューで、次第に温製チャーシューになる。その変化がとても楽しく、またチャーハンとの相性も最高でした。
ぜひ、皆さんも、『三陽』さんの「チャーシューチャーハン」を食べてみてください。
(撮影・文◎土原亜子)