最高にウマい「おろしそば」を堪能

さて、ここまで風変わりなお店の構造ばかりをお伝えしてきましたが、この『たけうち』さん、2024年で10周年を迎える人気店。蕎麦屋としての評価もすこぶる高い名店です。
店主・竹内浩三さんは御年70歳。この荒物屋を営みながら、趣味でそば打ちを始め、60歳の時に店内に蕎麦屋をオープンさせたそう。
「越前そば」が有名な福井県ですが、実は全国屈指の“そばどころ”としても知られています。福井では、地元の各エリアだけでとれる地の蕎麦=“在来種”の蕎麦粉を使うのが常識。品種改良されたメジャーなそば粉に比べ、個体差があって育てるのが難しい反面、複雑で奥行きのある旨味と香味を備えています。

この『たけうち』も、丸岡エリアで採れた在来種のそば粉を挽いて打つ蕎麦が人気です。今回、いただいたのは福井のソウルフードである「おろしそば」(620円)です。注文してしばらくすると、1.蕎麦、2.つゆ、3.薬味、4.鰹節、5.蕎麦が数本のった小皿――という5点セットがお盆にのって登場します。

食べ方は、次の如し。まずは右手前に置かれた赤い器に何本か入った蕎麦を、そのまま何もつけずにツルッと食べて蕎麦の香りを堪能。
その後、薬味(大根おろしとネギ)を半分つゆに入れ、蕎麦の上に削りたての鰹節をふわっとのせてから、いわゆる普通に蕎麦をつゆにつけながら楽しみます。

ちなみに、つゆは鰹節、昆布、大根の搾り汁で作っているそう。辛味の強い大根の尻尾のほうをおろした搾り汁だそうで、キリッとした辛味がやや甘みのある丸岡在来種の蕎麦と相性抜群。めちゃくちゃ美味しいです。

半分ほど蕎麦を食べ進めたら、薬味をすべてつゆに投入し、今度は蕎麦のほうにつゆを豪快にぶっかけていただきます。これ、福井ならではの食べ方なんですが、ワイルドな冷やし中華のような感覚で最高に楽しいです。
まとめ

荒物屋の中にある謎の蕎麦屋『手打ちそば処 たけうち』。ワイルドな店内構造からは想像もできない繊細で美味しい福井のおそばを堪能できるお店です。坂井市三国町にお出かけの際は、ぜひその味わいと独特すぎる店の雰囲気を楽しんでみてください。
(撮影・文◎たろきち)