ハイブリッドというより味のバリエ豊富な進化型うどん

『肉汁うどん 奥村』は、池袋駅の西口を出たところにある、飲食店が密集するエリアにありました。最近増えているガチ中華系のレストランや、タイ、ベトナム、ミャンマーなどのエスニック店もひしめく、ちょっとエキゾチックな雰囲気の場所です。

『肉汁うどん 奥村』はカウンター席のみですが、外に小さなテーブル席もあります。まずは入口の券売機で購入。今回は店名にもなっている看板商品「肉汁うどん」(並・880円)を食べることにしました。
空いている席に座り、食券を従業員の方に渡します。場所柄か、厨房では外国人スタッフが忙しそうに立ち働いています。日本の食文化もワールドワイドになったなぁと感慨にふけりつつ、卓上を見てみると、調味料の種類がめちゃくちゃ多いことに気づきました。

その調味料とは、(1)玉ねぎ、(2)油七味、(3)豆チ胡椒、(4)すりごま、(5)煮干し酢、(6)紅腐乳(べにふにゅう)、(7)かえし、(8)スパイス魚粉、(9)にんにくラー油、(10)バジル生姜の10種類。調味料といっても、けっこう変わり種が多い印象です。
というわけで注文した「肉汁うどん」(並盛・880円)が登場しました。

さて、讃岐うどんと武蔵野うどんのハイブリッドうどんなるその麺を確認です。目を引くのがペロンと載った1枚の幅広麺。これはうどんを切った時の端部分でしょう。本格的な手打ちだとわかります。
その下には太すぎず、中太タイプのうどんが鎮座。みずみずしくて、ツヤツヤと輝いています。見た目だけでいえば、無骨な武蔵野うどんというより、讃岐うどん寄りでしょうか。

そして肉汁には、大ぶりの豚バラ肉、ナス、長ネギ、油揚げといった具材がたっぷり。お出汁の香り・旨さと肉脂の甘み・コクが渾然一体となった、旨みたっぷりの甘辛醤油味。つるりとしたうどんですが、つゆをしっかり絡め取ってくれます。噛むとしっかりしたコシともちもち感で、噛むと甘辛いお出汁がじわりを染み出します。

もはや、讃岐か武蔵野かはどうでも良くなってきて、ひたすら美味しい肉汁うどんなのです。具材も多く、ガッツリ食べ応えもある。これはイイ!
しかも、前述した10種類の調味料等を使って味変すると、さらにとてつもなくウマく、楽しくなるのです。
例えば、肉汁に角切りの刻み玉ねぎを入れると「八王子ラーメン」風に。シャキシャキした玉ねぎの食感、そしてほんのりとした苦味。これが甘辛いうどんの味わいをギュッと引き締めてくれます。ここに煮干し酢をたらすとすっきりした味わいになり、後を引く。

また、うどんの方に「バジル生姜」を絡めてみると、パスタ風になります。今回は冷やしうどんにしたので、冷製バジルパスタならぬ冷製バジルうどんに。
さらに、うどんに紅腐乳(べにふにゅう)や豆チ胡椒、ニンニクラー油などを加えてみると、本格的な中国料理の味に変身する……といった具合。
このように10種類の調味料をあれこれ使い、うどんに混ぜて “まぜうどん”にしてみると、肉汁うどんとはまったく別の味わいが生まれるのです。この新鮮な味わいが面白くて、何より美味しいのです。

これらの調味料を駆使することで、ここの「肉汁うどん」は1杯で美味しさが無限大に広がるのです。もはやハイブリッド以上の進化型うどんに出会った気がしてなりません。
さすがは池袋の注目エリア。“ガチチャイナタウン”と呼ばれるだけあって、日本のうどん文化も異国のテイストが加わって、なにかまったく新しい食べ物に進化していく予感がしました。
(撮影・文◎土原亜子)