『安田屋』のわらじかつ丼がウマいワケ

入店すると、カウンターと小上がりの座敷があります。メニュー選びに迷うことはないと思います。なにしろ「わらじかつ丼」の「2枚入り」(1300円)か「1枚入り」(1080円)の2択ですから。ちなみに、どちらも味噌汁・お新香付きです。

ここで、多くの人はこう考えるでしょう。「ふーん、1枚と2枚の差は220円か……。ならせっかくだし2枚入りにしとくか」と。
しかしこのわらじかつ、“わらじ”の愛称を持つだけあって、想像より巨大。2枚入りは意外とヘビーであり、後々ボディブローのように効いてくるのでご注意を。

もし「2枚入り」を頼んだ場合、丼に2枚のカツが重なって出てくるので、まずは丼のフタをひっくり返して、その上に1枚のカツを載せておき、「1枚入り」と同じスタイルで食べていくのがスマートです。

巨大なカツを1枚、フタに移動すると、両手に花ならぬ“両手にカツ状態”となり、目の前は一面茶色の海、といったビジュアルになりますが、揚げ物好きにとってはたまらない光景だと思います。

甘辛いタレにくぐらせた揚げたてのカツは、衣はカリッとしていながらも、肉質はあくまでしっとり。見た目より厚みがあり、1cmくらいはあるでしょう。そして、カツとご飯の接地面がまた美味しい。甘辛いタレと脂の甘みが渾然一体となってご飯に染みており、非常にギルティな旨さを醸しています。
卓上には山椒と唐辛子が入った“カラシビ系”のスパイスが置いてあるので、途中でカツにふりかけて味変を楽しむのもまた楽しい。これがまた絶妙なアクセントになり、ご飯がすすみます。
そうこうしているうちに、わらじかつとご飯を無事に食べ終えるわけですが、このあたりで思い出すはずです。フタの上にまったく同じカツがもう一枚控えていることを。
もう一枚のわらじかつは持ち帰りもOK

とはいえ、丼にはもうご飯はほとんどない状態。ここで迫られるのは、(1)ご飯をおかわりする、(2)カツだけを食べる、の2択です。
しかし、もし「ご飯をください」と頼むと、タイムループもののアニメのように、もう一度、何事もなかったかのように最初から“わらじかつ丼体験”を繰り返すことになるし、かといってカツだけを食べるのも何か違う気がしますよね。
そもそも、もうけっこうお腹パンパンだよ……という人は、もう一つの選択肢「(3)お持ち帰り」を選びましょう。店員さんに言えば、快くテイクアウト用のプラケースをもらえるはず。

テイクアウト用のプラケースをいただき、フタの上のカツを移動させれば、立派な“秩父土産”の完成。自宅でもカツを味わえますよ。
(撮影・文◎如雨露)