名店が手掛けるミールスはさすがの旨さ

入り口に掲げられたランチメニューを見てみると、本日のカレー1種(1000円)、2種(1100円)、3種(1200円)、そしてカレー3種とサンバルが付いた「ランチミールス」(1400円)の4種類。この界隈の老舗カレー店は、1種類で1500円以上するところも珍しくないので、さほど高い感じはしません。

さっそく入店して「ランチミールス」を注文しました。店内は、外観のポップな印象とは少し異なり、ブルーの壁とブルーのレンガ、そして木製のテーブルの大人っぽい空間。店内にはほのかにスパイスの芳香が立ち込めているのですが、その香りもどこか洗練されている感じがします。

そうこうしているうちに、「ランチミールス」が運ばれてきました。大きな銀の皿(ターリー)に載っているのは、カレー3種(ポークブラックペッパーカレー、ひよこ豆のカレー、バターチキンカレー)と、サンバル、ラッサム、マカロニサラダ、パパド(インドの薄焼きせんべい)、バトゥーラ(揚げパン)、バスマティライスの計9種類。
一応、お店の方に食べ方を聞くと、まずはそれぞれのカレーやを味わい、その後、混ぜながら食べてみてください」とのこと。

まずは、カレーから。“辛口”と書いてあった「ポークブラックペッパーカレー」は、とろりとシチュー状。赤唐辛子やブラックペッパーのキリッとした辛みがあり、さらにトマトや野菜の甘みやコクも感じます。

「ひよこ豆のカレー」は、さらりとしたスープ状の一品。擦り潰した豆の優しい味わいの奥から、しっかりと辛さがやってきます。ゴロゴロ入ったブロッコリーやにんじんなどの野菜のホクホクした甘みが後を引きます。

そして一番マイルドな「バターチキンカレー」。南インドで食べられているカレーではありませんが、なんだかんだでみんな大好きな定番カレー。生クリーム、カシューナッツなどのまろやかアイテムとトマトの酸味が特徴ですが、ここのバターチキンカレーは濃厚な甘みとコクがありながらも過度にクリーミーすぎず、どこか大人っぽい味わいです。

3つのカレーのクオリティの高さは言うに及ばず、ぜひ味わって欲しいのが、サンバル」と「ラッサム」です。筆者がこのミールスでもっとも感激したのがこの2つ。まさに絶品でした。
「サンバル」は、南インドの味噌汁的な料理で、豆と野菜をスパイスやタマリンドで煮込んだ優しい味わい。そして「ラッサム」は前者よりスパイシーで酸味もガツンと力強いスープ。そのままスープとして飲んでも美味しいのですが、それだけではありません。

まず、サラサラしたバスマティライスに、サンバルやラッサムを少しかける。それだけでも十分美味しいのですが、そこにカレーもかけます。
例えば「サンバル×ポークカレー×ライス」、「ラッサム×ひよこ豆のカレー×ライス」といった具合です。かける分量によって辛味、酸味、甘み、苦味、旨味、そして香りが変化し、それはもう言い表せないくらい複雑な味。さらにインドの薄焼きせんべい「パパド」を砕いてかけても、食感が豊かになってさらに旨し。
おそらく分量や配合などは大した問題ではなく、どう混ぜ合わせてもその時々の“かけがえのない味”になるハズ。これは、サンバルもラッサムもカレーも、すべてがきちんと美味しいからでしょう。
そして食後のもたれ感もゼロ。あまりに美味しくて、バスマティライスをおかわりしてしまいました(おかわりは無料)。
まとめ

というわけで、さすが名店のDNAを受け継ぐ『ゴンド』のミールスは控えめに言って最高でした。次回はディナータイムに再訪し、インドのストリートフードやタンドール料理と一緒にインドワインを楽しみたいと思います。
(撮影・文◎土原亜子)